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映画製作に必要な各種契約寺澤幸裕(伊藤見富法律事務所 弁護士)

 プリプロダクションの段階以降においては、製作資金の確保ができるタイミングの前後にわたって、実にさまざまな契約を締結し、あるいはドキュメントの作成をすることが求められる。その一例を挙げれば、監督契約、俳優契約(あるいは当該監督および俳優の起用がコミットまたは予定されている旨を証する監督/俳優側からの書面)、映画製作契約、配給契約(プリセールの契約も含む)などがある。また、映画製作会社が外部のプロデューサーを起用する場合には、当該プロデューサーとのプロデューサー契約を締結することが必要である。そして、これらの契約やドキュメントの多くは、当該映画へのファイナンシアー(ローン提供者や出資者)から、当該映画にファイナンスを行うことを検討する材料として、あるいは保険会社から保険の引き受けを検討する材料として、その作成・締結が求められることになる。

 しかしながら、映画製作会社側としては、製作コストを調達することができないうちに、あるいは調達が確実視できないうちに、監督や俳優の出演をコミットしてもらうことは通常できないし、監督や俳優たちも、その状態で承諾することはほとんどない。一概に製作資金を確保し、保険を加入するために「契約」を締結するといっても、そこには数多くの留意すべき事柄があり、また知っておくべき事情が多数存在する。

 本稿では、ある映画について国際共同製作が行われるということを前提に、特に重要な監督契約、俳優契約、製作委託契約などを中心に、その契約内容に留意すべき点について解説を加えることとする。なお、以降の解説は、それぞれの契約における必要かつ十分な規定を網羅的に解説したものではなく、特に留意すべきと考えられる点を解説したものであるということをご留意頂きたい。また、本稿ではアジアにおける国際的な映画共同製作が行われることを前提としている関係上、資金調達もさまざまな国から得られ、監督や俳優の調達もさまざまな国から行われることを想定している。従って、我が国の映画製作のプロセスとは相当異なったことが記載されている場合があるが、この点についてもあらかじめご了承頂きたい。

目次

1. はじめに
2. 監督との契約
 2-1. 監督契約とは
 2-2. 監督契約の締結時期(デベロップメントフェーズ)
 2-3. Pay or PlayベースまたはPay and Playベースの契約
 2-4. 監督契約の内容と留意点
 2-5. クリエイティブコントロール
 2-6. ギルド契約
3. キャストとの契約
 3-1. キャストの選択の重要性
 3-2. 出演契約の内容と留意点
 3-3. ギルド契約
 3-4. 俳優側が契約不履行した場合の救済策
4. 脚本家との契約
 4-1. 脚本家契約とは
 4-2. 脚本家契約の特徴
 4-3. ギルド契約
5. 製作会社との製作契約
 5-1. 製作契約とは
 5-2. 映画製作契約の特徴
6. 配給契約書/二次利用契約書
 6-1. 配給契約の難しさ
 6-2. 配給契約締結上の留意点
 6-3. 配給契約作成・締結上の留意点
 6-4. 監督、脚本家等に対する二次利用料の支払い
7. 最後に

基本情報

ページ数
36ページ
出版社
経済産業省
言語
日本語
発行年
2011年