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イベントレポート:VFX-JAPANキックオフミーティング
概説
VFX(Visual Effects)業界の発展、興隆を目指す団体であるVFX-JAPANの発足に先駆け、現在第一線で活躍中のVFXスーパーバイザー、プロデューサーが一堂に会し、発足に至るまでの経緯と業界の未来について語った。
内容

登壇者

樋口真嗣/Shinji Higuchi

『日本沈没』監督

荒牧伸志/Shinji Aramaki

『アップルシード』監督

マイケル・アリアス/Michael Arias

『鉄コン筋クリート』監督

大屋哲男/Tetsuo Ohya

ピクチャーエレメント 『アンダルシア 女神の報復』VFXプロデューサー

尾上克郎/Katsuro Onoue

特撮研究所 『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』特撮監督

佐藤敦紀/Atsuki Sato

モーターライズ 『のだめカンタービレ 最終楽章』VFXスーパーバイザー

モデレーター

秋山貴彦/Takahiko Akiyama

『HINOKIO』監督・VFXスーパーバイザー

1.VFX-JAPAN発足に至る経緯


秋山貴彦:

VFXやCGの制作はパソコンで行うため、作業に直接関わる人間以外にとって、その行程はブラックボックスと化している。また、デジタル技術の発展や普及ばかりが注目され、実際に作業するクリエイターの顔が見えにくい。製作費の下落、人材減少、クリエイターのモチベーション低下など、VFX業界には不安要素が多いのが現状だ。こういった状況を打破すべく、アメリカのVES(視覚効果協会)をモデルに、VFX-JAPANという組織をつくろうと考えた。 VESの日本支部を作ってはどうかという提案も受けたが、まずは国内における問題の解決を優先した。現在は会員を募集しながら組織の情報を発信している段階だが、将来的には技術情報などの共有、アーカイブの作成、海外へのプレゼンテーション、そして人材育成支援などを行い、日本のVFX業界を活性化していきたい。

2.デジタル化に立ち会った世代が語る今後のVFX


樋口真嗣:

かつては、VFXを駆使した1秒の映像にかかるコストが100万円などという時代があった。しかし、技術の発展によってコストは激減し、デジタル技術に精通したクリエイターも増加している。これまでは特撮の延長線上にVFXが存在していたが、アナログ時代の経験がこれからのVFXにどこまで役立つのか、という不安は拭えない。アナログ時代を知らない監督やクリエイターの作品を目にする機会が増えたが、彼らは子供の頃からデジタル制作の映画やアニメ、ゲームのムービーなどを目にしてきただけあって、うまくVFXを使いこなしている印象を受ける。しかし、デジタル技術の発展によって映像に差が出にくかったり、似たような表現が多かったりするのも事実だ。新たな表現方法の確立が、今後の課題だと思う。

荒牧伸志:

撮影した映像のひとコマひとコマに手を加え、自由に加工できるのがVFXの面白いところ。複雑なデザインのロボットやメカを登場させる時に、実際に手で描くよりもCGで制作した方が簡単かつ動かしやすいのは周知の事実だろう。私はフルCGアニメ『アップルシード』を制作した時に手ごたえを掴み、デジタル制作は自分にとても合っていると実感した。 日本国内ではまだフルCG作品の認知度は低いため、コスト意識やマーケティングに敏感になりすぎるきらいがある。しかし、それがスタッフのモチベーション低下につながるようでは、本末転倒だ。選択肢は限られているかもしれないが、その中でやりたいことを最大限にやれるように動くことが大切である。

マイケル・アリアス:

デジタル技術の発展には心躍るが、現像液の匂いが懐かしくなることもある。しかし、樋口監督と同様に、アナログ時代に培った経験がデジタル時代の武器になるのかについては、正直なところ不明だ。デジタル世代のクリエイターが今後どのような作品を作るのか、興味が尽きない。立場的に日本と海外の技術の差などについて聞かれることが多いが、あまり深く考えたことはない。私は、一緒にやりたいと思える人たちが日本にいるから日本に住んでいる。私の仕事がアニメに関するものということもあるが、やはり日本のアニメ技術には一日の長があるだろう。

大屋哲男:

デジタル化によって製作費や時間的コストが改善され、映画の作り方が大きく変わってきた。私にとってVFXは、映画の未来そのものだ。デジタル技術の発展によって大量生産が可能になり、個性が失われるのではないかという危惧もあるが、それを使っている人間そのものがアナログの筆頭であることを忘れてはならない。クリエイター自身が個性を大事にすれば、アナログからデジタルへの変化に何の問題もないだろう。 VFX-JAPANは、業界人が集まって声を発する場ができること自体が有意義であると考えている。海外に向けての組織立った行動も必要だが、まだVFXの認知度が低い日本国内における啓蒙活動も大事だろう。

尾上克郎:

アナログ時代に培った経験は、デジタルの土俵でも生かせると思う。例えば、煙のエフェクトを作る時にデジタル世代は最初からすべてCGで制作しようとする傾向があるが、私から言わせれば何かに火をつければ実際に煙が出るのだから、それをうまく使えばよい。もちろんCGで制作したほうがよい場合もあるが、引き出しの多さこそがアナログとデジタルの両方に触れてきた世代の強みだろう。 デジタル世代の若者は新しい技術の習得だけでなく、先輩の仕事を見たり話を聞いたりして、自分の考え方や技術に幅を持たせることが大切だ。状況に合った合理的な方法をいかに提案できるかも、我々の仕事には必要なのだから。 情報共有や交流の場となるVFX-JAPANの存在はとても心強い。今回のミーティングや今後の活動も含めて、VFX業界の存在が認められればよいと思っている。

佐藤克郎:

アナログでVFX作業を行っていた時は、コストや時間的な問題から視聴者に見てもらいたい個所一点に力を入れざるを得なかった。現在はデジタル化が進んで細部までこだわることができるようになった半面、力を入れるべき場所がわかりにくくなっているのではないか。 VFX業界にはたくさんの人がいる。彼らの仕事が世間にもっと認められてほしいし、さまざまな場所でアピールしたい。これまでは難しかったが、VFX-JAPANがそれを可能にしてくれたらと期待している。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum 2011
会場
六本木ヒルズ49Fオーディトリアム(港区六本木)
開催日
2011/10/27
主催
VFX-JAPAN