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イベントレポート:米国アニメ市場戦略 -BtoCへのパラダイムシフトを追う-
概説
米国では、日本製アニメのDVDやマンガコミック単行本の市場が低迷している一方で、北米最大規模のアニメとマンガの祭典であるAnime Expoをはじめとする関連イベントの入場者数は純増傾向にあると言われている。本セミナーでは、米国でコンテンツを扱う企業の担当者を招き、ジェトロがAnime Expoで実施したセミナーやアンケート調査の分析を紹介しつつ、動画配信などを含めた最新の市場動向について説明。B to Cのマーケットをいかにブランド化し、利益に変えていくかのヒントを探る討論が交わされた。
内容

登壇者

平岡三知/Mitsuharu Hiraoka

NIS America バイスプレジデント

バリー・オロルク/Barry O'Rourke

CINEMA EPOCH 買付・配給担当部長

モデレーター

海部正樹/Masaki Kaifu

ジェトロ コーディネーター/WOWMAX MEDIA CEO

1.米国における日本製アニメの現状

海部正樹:

 米国における日本製アニメのDVD販売数は、2000年の「ポケットモンスター」のヒットをピークに年々下がっており、特に2010年は前年比で35パーセントも減少している。しかし、Anime Expoをはじめとする関連イベントの入場者数は年々増加している。現状でもDVDパッケージがビジネスの主軸であることには変わりないが、今後はYouTubeに代表される動画配信サービスによる露出増加やマーケティングを行うのが有効だろう。 そのためには「ファン=消費者」の現状を知ることが重要となる。2011年のAnime Expoで行ったアンケートでは、日本アニメを最も多く視聴しているのは17~26歳の男性であり、人種別に見ると約3割をヒスパニック系が占めているとの結果が出た。女性ユーザーも30代を中心に増えているが、男性と比べアニメよりマンガを好む傾向が強い。

 アニメの情報源は、回答者の8割以上が所有するパソコンから、4割近くがインターネットの動画配信サイトからと回答している。具体的には、YouTube、Hulu、Crunchyroll、Netflixを主たる情報源としている。ソーシャル系サービスでは、Facebook、Twitter以外にも、新進の情報共有型SNS「Tumblr」を活用しているユーザーが目立った。

 アニメの視聴媒体としては、1週間の平均利用時間でインターネットが8.1時間、DVDが4.7時間、テレビが4.4時間、Blu-rayが4時間となっている。また、購入希望単位としては、パッケージ、デジタル共に「シリーズ全話」がトップだが、デジタル配信では「1話ずつ」を望むユーザーが次いで多かった。デジタル配信アニメの30分1話に払う金額としては、回答が50パーセント以上を占める、1.5~2ドルまでというのが値頃なラインであろう。

2.デジタル配信に親しんだユーザーとのビジネスのヒント

平岡三知:

 私は日本で製作されたアニメのライセンスを預かり、米国市場向けにパッケージ化して販売する仕事をしている。米国市場における日本製アニメの小売流通最大手であったSuncoast Videoが2006年に倒産したことによって市場は縮小したが、やり方を変えればビジネスが成り立つのではないかと市場に参入した。現在は最悪期を脱したものの、上がり目もない緊張感の欠かせない状況にある。なぜなら、日本国内で配信された映像に米国のファンが字幕をつけて再配信する「ファンサブ」が存在しているため、日本同様に"無料で見られる=お金を払う意識がない"からだ。

 ビジネス的に厳しい状況ではあるが、インターネットの普及により視聴者数は増えている。私は「JUMP世代」と呼んでいるのだが、Viz Mediaが2002年から販売している月刊マンガ雑誌「SHONEN JUMP」(「DRAGON BALL」「遊戯王」「NARUTO -ナルト-」「ONE PEACE」など日本でヒットした作品を掲載)を小中学生時代に読み育った子供たちがマンガ・アニメをコアに楽しむ年齢となり、それがアニメ関連イベントの参加者増加にもつながっている。

 米国市場を意識したタイトルで、無理にビジネスを行う必要はない。今年日本でヒットした「魔法少女まどか☆マギカ」は、英語圏のコアなファンなら、日本での放送とほぼ同時にファンサブで視聴している。それならば、Hulu、Crunchyroll、niconico.comといった動画配信サイトとライセンスを結び、少しでも儲けを得たほうがいい。 弊社では、損益分岐点となる2,000本をパッケージ販売の基準としている。定価70ドルで販売している「刀語」の場合は、1クール分のBlu-rayとDVDを同一パッケージにして、ハードカバーのアートブックを封入した。無料のファンサブに対抗するには、おまけをつけるなど"体験を売る"ことが必要だと考えている。

バリー・オロルク:

 私は米国国内での配給向けに、世界中の配給会社から映像作品を買いつける仕事をしている。現在の米国市場は、DVDでのパッケージ販売とデジタル配信との境界線にある。デジタルのマーケットについての見通しはよくなく、現在は誰がどんなメディアを使って見ているのかのノウハウを蓄積しているところだ。個人的な見解として、デジタル配信は今後の主軸となっていくだろうから無視はできない。買いつけのポイントとしては、金額や内容など評価基準はさまざまだが、日本のアニメ作品にもチャンスはある。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum 2011
会場
六本木ヒルズ49Fオーディトリアム(港区六本木)
開催日
2011/10/27
主催
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)