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イベントレポート:K-POPの目指す世界戦略
概説
 東方神起、BIGBANG、KARAをはじめ、日本において目覚ましい活躍を見せるK-POPアーティストたち。現在のK-POPは、アジアを中心とした世界マーケットを最初から念頭に置き、長期間にわたる人材育成と周到なマーケティング戦略を行うビジネスモデルとして注目を集めている。本セミナーでは、韓国の大手レコード会社や有力芸能プロダクションから国際担当者を招き、今後のK-POPの国際展開について議論された。
内容

登壇者

パク・ウジン/Park Woojin

LOEN Entertainment Investment & Distribution Dept. Domestic A&R Team マネージャー

キム・キョンウク/Kim Kyounguk

Golden Goose Entertainment プロデューサー兼CEO

中村 卓/Taku Nakamura

ユニバーサルミュージック合同会社 ユニバーサルシグマ 制作本部 第1制作部 部長

モデレーター

キム・ヨンボム/Kim Yongbum

株式会社博報堂キャスティング&エンタテインメント コンテンツビジネス開発部 部長

1.韓国の音楽業界事情が生み出したK-POP

キム・キョンウク:

 私は韓国で20年にわたってレーベルに携わり、東方神起やBOA、H.O.T.といったアーティストを発掘してきた。現在は改善されているが、2003年ごろの韓国の音楽業界ではアーティストと短期契約を結んでいたため、他社による引き抜きなど多くの問題を引き起こした。そこで私は、アーティストの強みを最大限に生かすアーティストブランド戦略を立てた。メンバーが兵役や学業に戻るために辞めてもグループを存続させ、そこに新しいメンバーを迎え入れるやり方である。ベテランとフレッシュなメンバーが混在するこの手法は、現在のK-POP界でもさまざまな形で続いている。

 韓国のアーティスト育成システムは、最初にどの市場を目標とするか「プランニング」を行い、それに合うアーティストを「キャスティング」し、その新人を「トレーニング」する。その後、「プロデューシング」でミュージックビデオなどを含めたさらに幅広い経験を積ませ、本格的な活動スタート後は積極的な「PR」で売り出していく。今は多様な音楽ジャンルが登場し、YouTubeなどのニューメディアも発達。レーベル側も、特定の層をターゲットにきめ細かいアピールを行う時代になっている。

パク・ウジン:

 LOENは韓国最大規模の配信会社で、音楽配信サイト「Melon」を運営している。私が所属するコンテンツビジネス部門は多くのレーベルに投資し、コンテンツを確保する部門だ。配信・流通を手掛ける我々から見た韓国と日本の違いは、パッケージ市場の大きさである。現在、韓国はダウンロード販売が主流で、パッケージ販売は非常に少なく、日本や東南アジアにおけるCD売り上げで補っている。韓国国内では収益が足りないため、今や各レーベルは東南アジアや日本、中国など、海外に活路を見出しているところだ。

 コンテンツ展開に関しては、去年から海外マーケットに進出を始めた段階である。現在は、東南アジアや台湾で人気のパク・チョンミンというアーティストをサポートし、日本にもこれから本格的に進出しようとしている。K-POPは驚くほど日本で愛されているが、マーケットシェアは10%にすぎないと聞くので、まだまだ成長の余地があると思っている。

中村 卓:

 私はKARAとRAINBOWを直接担当している。KARAをプロデュースしようとした際には、日本でまだK-POPブームは起きておらず、女性のK-POPグループはいなかった。なぜそこでKARAを選んだのかといえば、純粋に彼女たちが優れたアーティストであり、日本のマーケットでも受けいれられるだろうと思ったからである。ちょうど同じ時期に少女時代の日本デビューが重なり、結果このふたつのグループが、日本でのK-POPブームの火つけ役となった。

 KARA、ひいてはK-POPがヒットした要因はひと言ではいえないが、まずは音楽にパンチがあり、迷いがないことだろう。グループでのダンス、振付がキャッチーなところとクオリティの高さも大きかった。ダンスに関しては一般の人でもなんとか真似できる難しさであり、そうした点も受けた理由のひとつだろう。韓国のネイティブスピーカー特有の、舌足らずな感じになる日本語でのしゃべり方も、キュートさを演出する武器になった。これらすべてを含めた総合エンタテインメントというのが、K-POPなのだと思う。

2.日本、そして世界でK-POPを広めるための戦略

キム・キョンウク:

 現在の世界のマーケットはアジア、アメリカ、欧州の3つに分けられるが、アジア全体の人口は約27億人である。これだけの規模の市場を持つアジアで1位になれば、イコール世界一になりえるだろう。これが本当に正解かどうかはわからないが、少なくとも私自信はそう考えており、韓国の音楽業界全体もアジア地域で積極的な展開を行っている。

 ただし、そこに送り出すアーティストを育てる際は、ローカルな市場を視野に入れるのではなく、世界をターゲットにする意識が重要である。きちんとマーケティングを行い、タイミングを意識することも大事だろう。さらなる成功を果たすため、展開先の各国で我々に協力してくれる企業との連携をより深めることも重視している。互いの強みを生かす協力体制の構築は、成功を目指す上で大きな課題になるだろう。

パク・ウジン:

 LOENではこれから日本を含めた海外市場に本格的な参入を行おうとしており、今はまだノウハウを蓄積している段階である。海外に進出する時に意識したいのは、エンタテインメントの本質がサービスであるということだ。日本でKARAや少女時代が成功したのは、日本語を学んでいたことも理由のひとつではないかと思っている。同様に、中国に進出するなら中国語を覚え、欧米に行くのであれば英語を覚えるべきだろう。ヨーロッパには韓国がどこにあるか知らない人もいたりするが、そうした人々が韓国語しかできないタレントをすぐに愛せるかといえば、それは疑問である。我々がコンテンツで本格的に海外へ進出する時は、そうした面にも気を配っていきたいと考えている。

中村 卓:

 KARAのように高いポテンシャルを持つアーティストを日本でプロデュースすることになり、全方位からヒットの戦略を立てた。まず着目したのは歌詞だ。K-POPブーム以前、韓国の音楽は日本市場でデジタル配信分野が特に弱いといわれていた。その理由として、日本人は通勤や通学時にヘッドホンで自分の世界に入って音楽を楽しむことが多く、歌詞の世界観を非常に大事にするという結論に達した。そこで、パンチ力のあるメロディとサウンドに共感できる歌詞を加え、デジタルオーディオでの聞き応えを重視した。韓国ではカップリング曲だったものの優れたパンチラインを持つ「ミスター」をデビュー曲に選んだことも、正解だったのではないか。

 ほかにも、映像を使ったビジュアル重視のプロモーションを重点的に行うなど、KARAの魅力を引き出すことを心がけ、大きな成功を収められた。2011年に入ってからは楽曲を日本でハンドリングしたコンテンツに移行させ、より日本市場向けの内容を意識している。我々のPR活動で、韓国の音楽が日本マーケットでさらなる発展を遂げ、ワールドワイドな世界戦略への足がかりになればと思っている。

3.音楽業界の構造や文化の違いを理解することも必要

キム・キョンウク:

 日韓に限らず、文化が異なる者が集まってアーティストをプロデュースする場合、服装や髪形、売り方など、決定権をめぐって衝突が起きる。ヒットを生み出す過程ではさまざまな主張が出てくるが、それがただの担当者のわがままなのか、その市場のニーズを熟考した上での提案なのか、きちんと考えるべきである。お互いの美学がぶつかった時にどう歩み寄るかは非常に難しい。そうした問題が出ることをある程度予想し、契約前に誰の意見を優先するのかも決めておいた方が、ビジネスがスムーズに行える。

中村 卓:

 レコード会社が制作、PR、流通を行う日本と違い、韓国はマネージメントカンパニーがアーティストと楽曲を作り、売り、宣伝、発売まで手掛ける。この構造の違いが、プロデュースの際に問題になってくることが多い。例えば、日本ではライブのDVDなどを作る時に原盤の印税は音楽と同じくくりになるが、韓国では映像がつくとマーチャンダイズ扱いとなり、印税が変わってくる。互いの常識が違っていた場合に、どこに着地点を決めるかというのは、なかなか難しいところだ。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum 2011
会場
六本木ヒルズ49Fオーディトリアム(港区六本木)
開催日
2011/10/26
主催
公益財団法人ユニジャパン