インフォメーション

イベントレポート:アニメ共同製作 海外とのパートナーシップと資金調達
概説
 近年、日本でも海外との共同製作への期待が高まっている。日本のアニメ業界と海外のコラボレーションにはどのような可能性があるのだろうか?
 本セミナーでは株式会社コミックス・ウェーブ・フィルムの角南氏が司会進行役となり、実際に国際共同製作を経験した日欧米のプロデューサーが自らの体験談を紹介。国際共同製作のメリットから業界慣習の違い、政府による支援、日本が目指すべき展開まで、幅広く語られた。
内容

登壇者

秋田 穣/Yutaka Akita

株式会社ポリゴン・ピクチュアズ プロデューサー

角南一城 /Kazuki Sunami

株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム 取締役/プロデューサー

ジョセフ・チョウ/Joseph Chou

株式会社SOLA DIGITAL ARTS 社長/プロデューサー

フレデリック・プエチ/Frederic Puech

Planet Nemo Animation 社長/プロデューサー

1.海外との共同作業では互いの文化への理解が重要

ジョセフ・チョウ:

 国際共同製作では、言語的な問題でクリエイター間のコミュニケーションが難しいのは当然だ。アニメの製作では、文化的な違いも問題となる。基本的な部分でも日本と海外では大きな違いがあり、そのギャップを両者が埋める努力が必要になる。日本は自分たちがクリエイティブコントロールをすべて担い、自発的に作品を作ることに優れている一方で、海外からの下請けや作業委託に慣れていない。海外から資金調達を行おうとする場合は契約があり、クリエイティブ面においても厳しいコントロールが入ってくる。特にアメリカは非常に厳格で、すべてのステップについてチェックが必要になり、権利も最終的には資金を提供した人々のものになる。海外の知的財産を扱う受注製作では、海外の市場の要求がどのようなものか理解し、どこまでの自由度が与えられるのかをあらかじめ知っておかなければならない。この壁を乗り越えれば、順調に作業が進められるだろう。

秋田 穣:

 アメリカからの作業受託の経験から思うに、彼らと日本では仕事観がまず異なる。アメリカではリスクヘッジのために契約が決められ、書面化される。製作スタイルにおいても、プロデューサー、ラインプロデューサー、ディレクターのそれぞれが明確な責務と権限を持ち、担当領域のことであれば担当者の裁量で即断即決を行う体制が取られている。ただし、これは悪い点もあり、決まったはずのことが上層部の決定で簡単に覆される場合もある。受託制作を行う場合は、クライアントに合わせる体制を理解しておかないと、戸惑いやフラストレーションにつながってしまうだろう。弊社ではそうした時にコミュニケーションがきちんと取れるよう、通訳チームを用意している。日本国内では、アニメやCGに詳しいバイリンガルの人材はあまりいない。アニメに対する興味や関心の強い人材を採用し、大きなクライアントとも対等にコミュニケーションできるレベルまで育てている。

フレデリック・プエチ:

 コミュニケーションの難しさは日本に限ったことではなく、フランスとアメリカでも大きなギャップが生じる。そのため国際共同製作の際、私は全体にスムーズなコミュニケーションが取れるよう準備する。文化的な違いについても、日本に限った話ではない。カナダのケベックとの共同製作では共に母国語となるフランス語で作業を行ったが、そこでも国の文化の違いを感じた。放送局ごとの放送コードも、そうしたもののひとつといえるだろう。

 共同製作に向けて準備しておくべきなのは、スタッフのバイブルだ。ライター、グラフィックなど、それぞれの作業において何が起きうるかを予測して対処法を用意し、それぞれの期待値を明確にしておく。それによって、将来的に発生するであろう問題を減らすことができる。

2.国際共同製作には資金、クォータ対策の両面でメリットがある

フレデリック・プエチ:

 国際共同製作の大きなメリットとしては、政府からの公的資金の提供と、各国のクォータを回避できる点にある。フランスでは製作条件を満たすことで、製作費の20%~25%ほどの資金を政府のフィルムファンドから受け取れる。条件は、フランス国内で一定レベルの作業を行うことと、放送局からも資金提供を受けることだ。国内での作業内容に応じたクレジットポイントというシステムもあり、これによっても受け取れる資金額が変わってくる。同種のシステムはカナダなどにもあり、共同製作の際は援助を含めてどれだけの資金が得られるかを評価した上で各国のスタッフに作業を配分し、申請を行うことになる。

 クォータ制度は映画やテレビにおいて国外のコンテンツの放送を制限するものだが、共同製作によって回避できる。さらに、特殊なやり方で援助を受ける方法もある。日本、フランス、カナダの3国で共同製作を行う場合、日本とカナダ、フランスとカナダの間に協定が結ばれていれば、製作費の援助に加え、協定を結んでいない日本がフランスのクォータをクリアすることも可能だ。フランスではクォータの制限を回避することで提供される資金に10倍ほどの差が出るため、非常に重要なことといえる。

ジョセフ・チョウ:

 私は海外のファンドで資金を集め、日本でプロジェクトを立ち上げることが多かったが、最近の円高で海外の支援も受けにくくなってきている。今後は扱うプロジェクトにもよるが、国際共同製作に与えられる支援は視野に入れていくことになると思う。 また、日本の抱える問題として、少子化などでアニメコンテンツが国内だけでは頭打ちになってきている。そこで世界に視野を向けるわけだが、クォータ制度がある国では販路が限られてしまう。国際共同製作でこうしたクォータを回避できるのは、今後日本のアニメコンテンツの展開にとって、とても重要になってくるのではないか。

3.日本の国際共同製作支援策への提言

ジョセフ・チョウ:

 日本でも経済産業省とユニジャパンによって、国際共同製作支援事業が始まったことは喜ばしい。ただし、この制度では年度ごとに審査が行われ、実際に資金が得られるのは製作の終了時ということになる。アニメにおいてプロダクトの立ち上げにはある程度の費用保証が必要なため、可能であればプロジェクトが開始される段階で審査を受けられ、迅速に資金が受け取れる方がありがたい。

フレデリック・プエチ:

 フランスの場合、公的資金は申請を行うことで段階的に提供される。最初に前金として40%ほどを受け取り、そこから製作の進行に応じて残りを徐々に受け取っていく形だ。これと比較して日本のシステムでは、資金が与えられるタイミングが最後というのが問題になるかもしれない。フランスでは審査を通れば資金がほぼ自動的に提供されるが、日本では選別プログラムということで最後に資金が払われない可能性もある。合否が前もってわかるシステムの方が、プロデューサーとしては安心できる。

 資金提供とは別の国際共同製作に関する政府の援助として、ヨーロッパではカートゥン・フォーラムというイベントが開催されている。これはヨーロッパ中から放送局、資金提供者が4日間にわたって集まり、プロデューサーたちがプロジェクトの発表と資金を募るイベントだ。共同製作のパートナー探しなどクリエイター同士の関係構築にも役立つので、日本でも資金面の援助に加えて、こうしたイベントを開くとよいのではないか。

4.日本のアニメスタジオも変革が必要

ジョセフ・チョウ:

 日本のアニメは、オリジナルでよいものを作り世界に広げるという方向性。だからこそひとつのジャンルとなり、グローバルなコンテンツとして成立した。現在も海外のクライアントが制作相手として日本を選ぶ時は、そのスタイルが求められる場合も少なくない。一方で受注制作のような共同製作を行う場合、日本のスタジオは経験に欠ける。特に国際共同製作では、拠点を海外に置くなど体制が大きく異なる場合もあり、そこをどう取りまとめるかが難しい課題となる。しかし現在の社会情勢を見るに、ビジネスとして共同製作は欠かせなくなるだろう。海外の作品が日本のアニメスタイルを取り入れて成功したように、日本のアニメスタジオは新しい表現や製作システムに対応できるよう、これまで以上に海外に向けてアプローチすることが必要ではないか。

秋田 穣:

 少子化などもあり、国内のマーケットはどうがんばっても拡大していかない。海外に市場を求めても、今は企画のアイデア段階から海外に広げることを意識しないとリクープは難しい。こうした背景がある以上、国際共同製作は避けては通れない道だろう。弊社では海外から受注したテレビシリーズのプロジェクトが複数同時に動いており、こうした作業で経験値を積むことで海外でのやり方を学んだ。日本人は検品能力が非常に優れており、いい、悪いというのを判断する力がアニメの分野にも生かされている。こうしたノウハウと長所を活用すれば、日本のアニメが海外のコンテンツに負けることはないはずだ。国際共同製作はそれを実証するうえでも、非常に重要になる。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum 2011
会場
六本木ヒルズ49Fオーディトリアム(港区六本木)
開催日
2011/10/26
主催
公益財団法人ユニジャパン