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イベントレポート:英国における最新放送事情
概説
 英国のテレビ業界では、テレビ放送がデジタルとの親和性を高める中で、数多くの独立系プロダクションが世界中にビジネスを広げている。二部構成の本セミナーでは、第一部にPactのスタッフほか英国の独立プロダクション関係者が登壇し、コンテンツ製作・輸出に関わる政策や知的財産権を利用した動きなどを紹介。第二部では、TBSとBBCワールドワイドによる成功例を挙げ、国際共同製作のあり方について検証された。
内容

登壇者

ドーン・マッカーシー・シンプソン/Dawn McCarthy-Simpson

Pact

デイビッド・リーチ/David Leach

Mentorn International 社長

戸田郁夫/Ikuo Toda

株式会社TBSテレビ 編成制作局担当局長

輪座克彦/Katsuhiko Waza

BBCワールドワイドジャパン株式会社代表取締役社長

1.独立プロダクションが躍進を遂げた英国テレビ業界

ドーン・マッカーシー・シンプソン:

 英国では2003年に通信法が改正され、独立系プロダクションが知的財産の所有を含めたさまざまな権限を得られるようになった。そのため、現在はフォーマット権の販売、マーチャンダイズ、デジタル配信など多様な方面で、知的財産をいかに拡大し活用するかを考えることが、独立系プロダクションにとって重要な課題となっている。我々は世界で70以上のフォーマットを販売しており、2009年と2010年のデータ比較では新規委託契約で292%、デジタル権利で48%の増収という大きな成長を遂げている。デジタル権利については、2012年に英国全土がデジタル放送化されるため、さらなる収益拡大が見込まれる。

 番組の権利を保有し、自分たちの権限において制作する上では、広告主のブランドと協力するプロダクトプレイスメントも重視される。欧州ではこの分野にHFSS(High Fat, Salt and Sugar)のような厳しい規制があり、それらも踏まえた制作が必要だ。任天堂の「Brain Age」というゲームソフトと連携した番組「Britain's Best Brain」では、ソフト自体を直接番組に反映させるのではなく、ソフトに共通する知的好奇心に関連する内容にした。ブランドと番組がそれぞれ統一性を損なわないよう番組は制作され、ソフトの売上を24%もアップさせるという成功を収めている。

 今後の英国テレビ業界ではConnected TVなど新たな分野の拡大も予測され、テレビ番組を核にしたデジタル権に関する成長がますます続いていくだろう。英国王室が著作権を持つパブリックプロキュアメントに関しても、デジタル権を利用した展開で3億ポンドの収益が見込まれており、政府との対話を現在積極的に行っている。

2.知的財産権の活用でビジネスチャンスは大きく広がる

デイビッド・リーチ:

 Mentorn Internationalでは、欧米地域を中心にした番組のフォーマット権販売で高い収益を挙げている。フォーマット権の提供にあたっては、元の番組がよい内容であることに加え、コンサルタントなどを通じて提供先に応じた細かい指示を行うことも重要だ。成功させるためには、台本やセットを渡すだけでなく、実用的なルーチン面もきちんと整えなければならない。制作現場の設定、キャストの起用法、コストを抑える効果的な撮影ノウハウなど、伝えるべきことは非常に多い。英国やアメリカでは制作コストも他国より多くなりがちで、別の国で制作を行う場合はその予算の違いを意識する必要もある。

 フォーマットは、必ずしも特定のスタイルを持つものではない。例えば、「Make Me a Baby」は最初にドキュメンタリーシリーズとして提供され、それをフォーマットとして構成し直した番組である。最初にオランダへフォーマット権を提供した際、エンタテインメント性をプラスして人気を集め、現在は他の多くの国でも制作・放送が行われている。このように、いかなる形からも新たなフォーマットは作り出すことができ、うまく再構成を行えば、ほかの国に展開して成功を収められる。

 フォーマット権販売以外でも、番組の知的財産権を持っていればDVDや書籍といった他のメディアへのライセンス展開も行える。こちらもヒットが出れば、よい収益源になる。独立系プロダクションが収益の拡大を望むのであれば、やはり知的財産権と取引条件をもう一度検討し、世界に向けてそれを活用するべきだろう。

3.国際共同製作では信頼と互いの方針を尊重することが重要

戸田郁夫:

 日本というマーケットでは、1980~90年代に放送局が海外取材を頻繁に行うようになってから、ほぼ100%の素材を自前で集めるようになった。このため、日本では海外の番組をそのまま受け入れるのは嫌だという風潮が視聴者に定着している。海外のプロダクションは編集権に強いこだわりを持っており、日本語版を制作するにあたって台本のチェックを要求されるケースもある。両者の文化がうまく融合した共同製作というのはなかなか難しい。

 「古代エジプト夢と冒険」や「戦後60年特別企画『ヒロシマ』」では、BBCが製作したドラマスタイルの番組を素材に、日本独自のアレンジを加える制作スタイルを採用し、成功した。結果としてBBCの番組とTBSの番組では内容が異なっているが、大胆に変えなければ日本のマーケットでは受け入れられない。ただし、こうしたやり方を実現するには信頼関係が必要である。これらの番組の制作にあたって自分もBBCのプロデューサーと直接話し合いの場を持ち、理解を求めた。

 現在は制作予算が緊縮され、インターネットへのコンテンツの蓄積、映像のボーダレス化、BSチャンネルの増加など、テレビを取り巻く状況もさまざまに変化している。BSのチャンネル増加については、TBSとBBCがやったような大掛かりな共同製作を行う時間も予算も今は放送局になく、コンテンツ調達が追いつかなくなるのではと考えている。これを補うために海外番組の翻訳版を制作し、そこに少し手を加えて日本人向けに構成し直すといった手法も必要になってくるのではないか。

輪座克彦:

 TBSとのこうした共同製作スタイルは、文化の違う日本で海外の番組を放送するためのひとつの解決策といえる。番組の編集権は最も大事な部分であり、それは今でも変わらないが、両者の信頼関係があればこうした方法もありうるという好例だろう。実現の理由として、その当時にBBCの番組制作スタイルが、従来のドキュメンタリー形式から視聴率を意識したドラマスタイルへと変化したことも大きかったと思う。

 共同製作においては、互いの考え方の違いをディスカッションし、相手を理解して決定することが非常に重要である。我々としてはより多くの作品を日本に紹介していきたいと思うが、相手にこちらの編集方針を尊重する姿勢がなければTBSとの共同製作のようなことはできない。共同製作の際に出てくる問題の解決法はひとつではないため、業界の変化に応じたさまざまなやり方がこれからも模索されるだろう。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum 2011
会場
六本木ヒルズ49Fオーディトリアム(港区六本木)
開催日
2011/10/26
主催
英国大使館