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イベントレポート:海外映画祭 プログラマーサミット
概説
 今や数多くの日本映画が海を渡り、海外のさまざまな映画祭で上映されている。世界の映画祭から見た日本映画の評価とは? 世界の映画祭で上映される日本映画には、どのような特徴や傾向があるのか? 一般的な国際映画祭の視点、そして日本やアジアをテーマにした専門映画祭の視点で、ディスカッションが行われた。
内容

登壇者

マリオン・クロムファス/Marion Klomfass

ニッポン・コネクション フェスティバル・ディレクター(ドイツ)

ジェイコブ・ウォン/Jacob Wong

HAF ディレクター(香港)

サブリナ・バラセッティ/Sabrina Baracetti

ウディネ・アジア映画祭 フェスティバル・ディレクター(イタリア)

ロジャー・ガルシア/Roger Garcia

香港国際映画祭 エグゼクティブ・ディレクター(香港)

ジン・パク/Jin Park

プチョン国際映画祭 プログラミング・ディレクター(韓国)

マーク・ウォルコウ/Marc Walkow

ニューヨーク・アジア映画祭 ディレクター/プログラマー(アメリカ)

ヘルチャン・ズィルホフ/Gertjan Zuilhof

ロッテルダム国際映画祭 プログラマー(オランダ)

マーガレット・プゥ/Margaret Pu

上海国際映画祭 フェスティバル・マネージャー(中国)

クリストフ・テルヘヒテ/Cristophe Terhechte

ベルリン国際映画祭 フォーラム部門ヘッド(ドイツ)

モデレーター

ジェイソン・グレイ/Jason Gray

スクリーン・インターナショナル 日本特派員

1.海外の映画祭における日本映画とは

ロジャー・ガルシア:

 香港国際映画祭はアジア最古の映画祭ということもあり、日本との関係が深い。そのため、香港では大島渚監督、林海象監督、寺山修司監督などの時代から、日本映画監督の知名度は高かった。最近は若手監督の紹介にも力を入れており、三池崇史監督の『忍たま乱太郎』は好評を博した。

クリストフ・テルヘヒテ:

 さまざまな国の映画を試写してきたが、中でも日本のインディーズ作品を重要視している。特に、若い監督の作品は革新性と多様性にあふれており、我々のような映画祭のプログラマーはインスピレーションを刺激させられる。 日本とドイツは歴史に共通点があるため、日本映画だけでなく、政治や歴史、マンガやアニメに関心を持つドイツ人は多い。昔の日本映画はもちろん、最近の作品を見たいという声も多く寄せられる。日本映画の試写会は毎回ほぼ満席になり、上映後の質疑応答の時間がとても長いのが特徴だ。

マーガレット・プゥ:

 私たちの映画祭が誕生する前から、中国の東南部では日本映画が好まれていた。しかし、当時上映されていたジャンルは一定のものだけで、日本映画の特徴である多様性を知る人は少なかったと思う。そのため、上海国際映画祭の開催にあたり、私はさまざまなジャンルの日本映画を紹介しようと考えた。 インディーズやアニメ映画をはじめ、まだなじみのないジャンルの作品もプログラムに導入していきたい。マンガやアニメが大人気ということもあり、それらが原作の映画には注目が集まる。日本のテレビアニメを見て育った20代から30代の世代を中心に、ニッチなマーケットが育ちつつある。

ジョイコブ・ウォン:

 香港国際映画祭と同様に、日本映画は来場客に好評だ。毎年12~16の日本映画を紹介しているが、これはほかのどの国よりも多い。香港の観客は、ファンタジー映画よりもコメディ映画を好む傾向にある。また、若手俳優よりも中年の俳優が活躍するコメディ映画の人気が高いのも、特徴のひとつだ。 若い世代は、やはりマンガやアニメが原作の映画に興味を寄せている。日本のマンガが日本で発売されると、その6週間後には翻訳版が香港で発売されるため、最近のマンガ事情に明るい人も多い。マンガやアニメだけでなく、ゲームや音楽などのポップカルチャーも人気があり、東アジアは強い影響を受けている。

ヘルチャン・ズィルホフ:

 私はロッテルダム国際映画祭との関わりが長く、長年に渡る変化を間近で見てきたひとりでもある。多くの国の作品を見てきたが、その中でかつて日本映画は、主にホラー映画やアート系の作品が出展され、一定の評価を得ていた。 2000年に大規模なジャパンプログラムを企画してさまざまな日本映画を紹介したのだが、それ以降から日本映画に対する見方が変わったように思える。多様なジャンルの映画を紹介できたことで、ホラーやアート系の映画以外にも注目が集まった。 日本の文化になじみがないというのも、関心が集まる要因のひとつだろう。アメリカやヨーロッパの映画は文化が似ていたり見慣れていたりするせいか、すぐに展開が読めてしまったりする。異なる文化圏が持つエキゾチックな雰囲気に、魅力があるのではないだろうか。 各国の国際映画祭には、それぞれ人気の高いジャンルや傾向といったものが確かに存在する。しかし、国際映画祭に出品するための映画をつくろう、などという考えを持つべきではない。学生から、映画祭で受け入れられる映画製作のアドバイスを求められることが多いが、自分自身が撮りたいと感じた映画をつくることが大切だと思う。

マリオン・クロムファス:

 我々の映画祭は開催当初は文化プログラムで、「珍しい映画も上映しているイベント」として報道されたことがある。もちろん現在はそうではなく、日本映画の普及にも貢献していると思っている。 知名度の劣る映画祭だったので、上映のために日本映画を確保するのは大変だった。ドイツの映画祭と言えばベルリン国際映画祭が有名で、我々の映画祭など誰も知らないし、信用もしてくれない。また、予算が限られていることもあり、高騰する試写料が大きな負担となった。

ジン・パクプチョン:

 さまざまな国から映画が出品されるが、日本映画の評価は高く、期待を集めている。ほかの映画祭でも人気のインディーズ系や、マンガやアニメが原作の映画、そして劇場アニメ以外にも、女任侠映画や日活特集などに関心が集まっているのが特徴だ。 日本映画のファンは多く、あの映画がない! と文句を言ってくるコアな方から一般層まで幅広い。日本映画には多くの期待と注目が集まるため、選択する立場としてもプレッシャーが大きい。やはり新作映画を求める声が大きいが、これからはレトロ映画もプッシュしていきたいと考えている。 韓国もそうなのだが、これまで日本の映画会社は海外市場に対する意識が低かったと思う。以前に「機動戦士ガンダム」の特集を企画した時は権利関係が複雑で、開催までに大変な苦労を伴った。しかし、このイベントは成功し、シリーズ作品の劇場公開につなげることができた。

サブリナ・バラセッティ:

 ウディネ・アジア映画祭では、2000年に初めて日本映画を紹介した。それまでイタリアでは日本映画の知名度は低く、北野武監督の作品くらいしか知られていなかった。現在、人気の高いジャンルはホラーやメロドラマ、そしてファンタジー。日本映画を通して、イタリア人も日本の文化になじんできたように感じる。 しかし、日本映画は上映作品の確保が難しかった。かつては、受賞制度は審査員制ではなく観客主体でないと駄目だと言われたり、こちらの知名度が低いせいか、海外は意識していないと無下に断られたりしたこともあった。

マーク・ウォルコウ:

 「我々が面白いと思った作品を上映する」というのが、ニューヨーク・アジア映画祭のコンセプト。日本映画はその中において大部分を占めており、人気も高い。香港映画はアクション、韓国映画はドラマやアクションといったイメージがあるが、日本映画はすべてのジャンルを内包する多様性が魅力だ。 上映作品の確保には、やはり我々も苦労させられた。とある大手企業には「Cランクの映画祭には作品を提供できない」と言われたこともある。また、担当者の人事異動が多く、ビジネスにおける人間関係を継続しにくい。アメリカでは受け入れられないのではないか、という理由で出展を渋られることもあるが、もっと北米の観客を信用してほしい。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum 2011
会場
六本木ヒルズ49Fオーディトリアム(港区六本木)
開催日
2011/10/24
主催
東京国際映画祭(TIFF)