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イベントレポート:焦点・中国の動画配信ビジネス-流通促進と権利保護-
概説
 多分野で急成長を遂げる中国産業界。インターネット利用者は5億人を越え、コンテンツ産業の成長も著しい。その一方で、根強い海賊盤の問題や政府による規制など、越えなければならないハードルはいまだ残されている。本セミナーの冒頭でも、MPAアジア太平洋地域担当プレジデントのマイケル・C・エリス氏が登壇。それぞれの中国市場への印象や取り組みが述べられ、業界からの関心の高さをうかがわせた。続いて、米韓の大手コンテンツ提供者と中国国内でコンテンツ配信を手掛ける大手サイト代表者が登壇。コンテンツを提供する側から見た中国市場、サイト運営者による国内の状況説明、海賊盤問題への対応といったテーマが語られた。
内容

登壇者

マイケル・C・エリス/Michael C. Ellis

モーション・ピクチャー・アソシエーション アジア太平洋地域担当 プレジデント/マネージング・ディレクター

ルシア・ランジェル/Lucia Rangel

ワーナー・ブラザース エンターテイメント ラテン・アメリカ/アジア太平洋地域担当  アンチ・パイラシー・オペレーション/バイス・プレジデント

キャサリン・キム/Katharine Kim

CJエンタテインメント CEO

劉春/Liu Chun

ソーフー・ドット・コム バイス・プレジデント/ソーフー・ビデオ・エンタテインメント COO

龔宇/Gong Yu

チーイー・ドット・コム CEO

劉弘/Liu Hong

LeTV 副会長兼COO

朱 輝龍/Zhu Huilong

ユーク・ドット・コム バイス・プレジデント

モデレーター

遠山友寛 /Tomohiro Tohyama

TMI総合法律事務所 パートナー弁護士

1.海賊版対策に貢献する権利者側のライセンス供与

ルシア・ランジェル:

 ワーナー・ブラザースではMPAと共同戦線を張り、著作権侵害に対して積極的に戦ってきた。なかでも中国は海賊版の流通が盛んな地域であり、対応に特に注力した。現在では中国政府の方針もあって対策が進み、1日1,000件あった著作権侵害は、ほぼゼロにまで近づいている。

 これまで違法配信サイトへの対策は、企業に対する広告出稿の停止要求、各検索エンジンによるアクセス遮断、政府やISPへの苦情などの方法が取られ、ある程度は成功していた。さらに大きな変化をもたらしたのが、著作権者側が中国の多くの違法動画サイトの運営者と対話し、合法的なライセンスを供与したことだ。協業体制で各サイトは合法的に利益を得られるようになり、彼ら自身も著作権保護に力を入れるようになった。結果、現在の中国の大手サイトでは海賊版がほとんどなくなり、よりよいビジネスが行える場となっている。

 オンライン配信ビジネスのメリットは、DVDなどのメディア販売と異なり、誰がどういった経路で違法アップロードやコピーを行ったかが追跡できる点だ。違法な配信に対しては訴訟も辞さないが、小規模なポータルサイトのすべてを訴えることは難しい。話し合い、協力体制を築くことが、互いにとって最良の方法といえるだろう。

 ライセンス供与の交渉について、中国はアメリカとは異なり、簡潔な契約書で明日にでも契約しようという姿勢が見られる。コンテンツ市場への参入を考えるなら、まずは提携の交渉を試みるべきだ。きちんと提供する姿勢をこちらが持ち、向こうもビジネスになると思ってもらえれば、協力関係を作れるだろう。

2.オンライン配信には中国のクォータ制に縛られない利点も

キャサリン・キム:

 韓国は、中国とのビジネス以前に自国内で海賊版による大きな被害を経験している。2000年ごろの韓国はIT産業が急速に発展し、コンテンツが大量に必要とされたが、著作権保護についてはあまり意識されなかったため、海賊版や違法配信が蔓延してしまった。2007年から政府が著作権保護に本腰を入れ、近年ではそうした悪い状況が大きく改善されたが、これと同様のことが現在の中国でも始まっている。

 中国とコンテンツビジネスを行う上でオンライン配信が重視されるのは、海外作品の公開を制限するクォータ制を中国が導入していることが大きい。限られた枠の中で配給される作品は、その多くが人気の高いハリウッド作品であり、韓国や日本の映画が公開される機会は少ない。だがオンライン配信にはこのクォータ制がなく、正規のビジネスが行われれば、相当の収益につながると見ている。

 中国におけるビジネスでは、著作権侵害があった場合にある種の保証金、和解金のようなものが得られるようになったことも重要だ。これに関してはさまざまな形があり、具体例を挙げることは難しいが相当の金額で、我々の収益の一部になっている。交渉については、オープンな形での話し合いを持ち、相手にとってベストなビジネスモデルを追求すればよいと思っている。ただし、利益を上げることを目指すのであれば市場に早く入るべきだ。いちばん乗りというのは、やはり有利である。

3.収益に直結するため、中国の大手サイトは海賊版対策を徹底

劉春:

 国内で最も早く設立された動画サイトのソーフー・ドット・コムは、2009年に中国で初めて100%正規ライセンスの海外コンテンツを取り扱った。現在は7億人の会員を持ち、海賊版に対するさまざまな取り組みも模索している。2009年当時、中国の海賊版に対する法整備は十分に進んでおらず、懲罰も緩かったために取り締まりが困難な状況だった。そこで弊社では、国内で正規版を扱う110の業者と、国内外の著作権者、広告業者、法律機関が連携する対海賊版連合を結成し、動画サイトで全面的に正規版を扱おうという風潮を作った。 動画サイトが正規版の扱いに力を入れるようになった背景には、広告収入の存在が大きい。版権の面でリスクがないものを扱うことで、広告スポンサーが安心して広告を提供できる場となり、大きな収入源となっている。 ?宇:

 チーイー・ドット・コムは中国最大手の検索サイト、バイドゥの投資を受ける動画サイトで、バイドゥとの連携を強みとしている。現在の中国の動画サイトには投資、人材共に大きなエネルギーが注がれているが、産業全体ではまだまだ未熟で赤字運営が行われている。正規コンテンツを購入するコストを広告費で賄えておらず、現時点で残っているのは10社程度。今後も競争は続き、運営コストも増加するため、最終的に残るのは3~5社程度ではないか。

 動画サイト自体のニーズは高く、ユーザーの利用時間ではポータルサイトに次いで2位。あと2~3年でそれもトップになるだろう。このことから我々の収益が増えていくのは確実であり、そのスピードもかなり早いはずだ。昨年の中国全体の動画サイトの広告収入は、私個人の見立てでは約20億人民元ほど。今年は40億人民元、来年は80億人民元になると見ている。80億人民元はテレビの広告収入の70%ほどにもなる額であり、見通しは明るい。ユーザーから得られる収益も、海賊版の問題が解消すれば3年以内には増大するだろう。4~5年後にはユーザーからの収益が広告収入を越えることを期待する。

 海賊版の取り締まりについては、政策、司法、商業的なアプローチの3つの方向性があるが、中国で最も有効なのは商業的なアプローチだと考える。海外のコンテンツ企業が我々と契約した場合、海賊版の存在に困るのは彼らに支払いを行う我々自身だ。それを防ぐために法律家や弁護士を雇い、行政手段を使ってでも取り締まるつもりである。

劉弘:

 LeTVは映画とテレビドラマを専門に、中国で最初に著作権料を支払って動画サイトを始めた。当時の中国のユーザーは無料でコンテンツを視聴することに慣れ、料金を払ってまで見たくはないという気風があり、かなりの苦労があった。我々は政府に働きかけ、業界団体やほかの業者と手を携えて正規版を利用しようという啓蒙活動を行ってきた。 加えて、我が社では海賊版への対策として24時間体制のネットワーク監視システムを構築している。海賊行為を行う人々は企業の業務時間を大きく外れた深夜や明け方に違法コピーやダウンロードを行い、監視の目を逃れようとする。我々のシステムではこうした違法ダウンロードを迅速に検出し、速やかで適切な取り締まりの手段を講じている。

 著作権侵害の形式はさまざまだが、それを防ぐために重要なのは、著作権についての啓蒙活動で意識を高めることと、そうした意識を備えたユーザーと権利者を我々のような業者がいかに迅速にリンクさせられるかにかかっている。著作権者が海賊版を恐れて参入を控えても、海賊版がなくなることはない。ユーザーが合法コンテンツを購入できる正しいチャンネルを確保することを考えてほしい。

朱 輝龍:

 ユーク・ドット・コムは中国最大の動画サイトであり、映画も大きく扱ってきた。中国では毎年600本の映画が制作され、うち劇場で公開されるのは250本。ほかに50本ほどの海外作品が公開される。劇場の数も2年前に比べて2倍近くに増加し、興行収入も2009年の62億人民元から、2011年は130億人民元になると予測されている。しかし貧富の格差などから、3年後にはこの成長も緩やかになるだろう。映画の数に対して、上映先が圧倒的に足りない状況は変わらないといえる。

 こうした映画の受け皿は、DVD販売、ケーブルテレビなどの有料放送、インターネットの3つのメディアである。しかし、DVDビジネスには海賊版問題がつきまとい、有料放送も中国のシステム上の問題があり、全土をカバーするケーブルテレビのネットワークがほとんどない。残るインターネットが、劇場公開を終えた映画や劇場で上映されなかった映画の視聴ニーズの多くを補完することになる。

 弊社では、提携した海外ライセンス作品を5人民元ほどの価格で配信し、2010年にはここからある程度の収入が得られるようになった。この価格設定は海賊版の価格とほぼ同等であり、国内では5人民元で正規版を見るのか、違法と知って海賊版を利用するかという論争を巻き起こした。現在はサービスの幅も広がり、有料配信の利用者もさらに増加。今年は350万人ほどのユーザーが配信サービスを利用する見通しだ。動画サイト利用者に関して、2011年の調査では3億1,600万億人、ネットユーザーの70%が利用するというデータが出ており、今後はさらに増えていく。コンテンツメーカーの市場として、中国の動画サイトが非常に有望なのがわかっていただけるのではないか。

4.センサーシップ(検閲)やクォータは政府の方針次第

龔宇:

 センサーシップの問題は政府が決めることなので、企業の人間である我々からは「これなら大丈夫」と言い切ることはできない。映画館、テレビ、インターネットと流通チャンネルはさまざまだが、そこで流されるコンテンツは政府の規定に合致したものでなければならず、原則的にポルノや政治的な内容は我々サイト運営側でも自主規制を行う。将来的にはルールが公表されると思うが、具体的な内容については我々も発表を待っている状況である。

劉弘:

 インターネットに対してはまだコンテンツに対する監督が緩やかで、恩恵を受けている面はある。現在は、許可がなかったとしても政治的またはわいせつな内容でなければネット上で流すことができている。しかし、最近は映画やテレビの制作者、テレビ局がニューメディアもテレビやそれ以外のメディアと同様の基準にすべきだと政府にプレッシャーをかけ始めており、このような黄金期は長く続かないかもしれない。そのため、中国の動画サイト市場に入ろうと思うなら早くしたほうがよいだろう。

朱輝龍:

 中国のクォータ制は、映画館とテレビ局に対して設定されている。映画館では年間50作。テレビ局では局ごとに割合が異なり、最大の枠を持っているのは中国中央電視台(CCTV)で、年によって枠の数も変化する。 現段階で制限なしのルートとして唯一残っているのは、DVDやCDといったパッケージメディアの輸入である。海外企業は海賊版を恐れて参入しないケースが多いが、現時点で参入しておけば権利が長期にわたって保障される。将来、政府の方針が変化した場合、未参入のコンテンツメーカーはこの分野でも参入しにくくなる可能性がある。こちらにも早めに参入することが必要かもしれない。

5.対立ではなく共存する、中国のテレビとインターネット

朱輝龍:

 広告収入に関して、他国ではテレビとインターネットなどのニューメディアの対立構造があるが、中国においてはそれほど深刻な状況ではない。今はテレビとネットは共存しており、視聴率とアクセス率が共に上がっている状態だ。むしろ、ネットワークが国内に数千も存在するテレビ局のチャンネルの優位性や価値を向上する役割を果たしている。

劉春:

 テレビ局自体はインターネットや動画サイトを非常に警戒している。とはいえ、ネットとテレビの広告収入の割合を比較すると、まだテレビが圧倒的に多く、その面での危機感はあまりない。中国のテレビ局はテレビを放送するチャンネルであると同時にプロダクションでもあり、互いに競争を行っている。テレビ局がネットを通じて自社のコンテンツを広めている状況もあり、ここでの連携や協力が微妙な関係の維持に役立っている。

龔宇:

 ネット配信業者は国内のドラマ作品の権利購入に意欲的であり、最近ではネットのドラマの方がテレビよりクオリティが高くなる現象が起きている。加えてネットでは、多くのアメリカの人気ドラマがいち早く配信される。ドラマを好む中国人視聴者が、テレビからネットへと流れる現象は今後も進むだろう。中国の動画サイトは、テレビ局が株主になっているケースがほとんどない。資本面での共存関係がないテレビが、ネットに対して危機感を覚える面はあるかもしれない。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum 2011
会場
六本木ヒルズ49Fオーディトリアム(港区六本木)
開催日
2011/10/24
主催
公益財団法人ユニジャパン