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イベントレポート:変化を遂げる中国映像コンテンツ市場 -テレビ・ネット配信ビジネスの現場から-
概説
 中国テレビ番組制作会社のキーパーソンを招いた本セミナーで語られたのは、テレビの多チャンネル化やインターネット配信サイトの普及が進み、消費者ニーズが多様化する中国の映像業界の最新事情について。新しいタイプの番組提供の必要性は高まってきており、海外テレビ番組のフォーマットの導入やリメイク、共同製作などの取り組みも進んできている。
内容

登壇者

羅文/Luo Wen

北京木火通明影視文化傅媒有限公司 副総裁

何 暁輝/He Xiaohui

上海剧酷文化傅播有限公司 副総経理

城田信義 /Nobuyoshi Shirota

株式会社ジャパンエフエムネットワーク 営業部 プロデューサー/イベント・映像制作事業ディビジョンチーフ

1.中国で高まる海外番組フォーマット権の取引ニーズ

羅文:

 現在の中国のバラエティ番組においては、中国中央電視台(CCTV)と地方の衛星テレビ局、地方局同士の間で競争が激しくなっており、海外のテレビ番組フォーマットへのニーズが高まっている。海外の番組はより視聴者を引きつけやすく、ブランドイメージのアップにつながる面もあり、多くのテレビ局がフォーマット権を購入し、ローカライズを行っている。特に衛星チャンネルでは、この動きが活発だ。

 バラエティ番組で人気なのはカップリング系、オーディション系、アトラクションゲーム系の3ジャンルで、「Take Me Out」「Dating in the Dark」「Britain's Got Talent」といった海外フォーマットをローカライズした番組が成功を収めている。各種インターネットサービスと多元的なプロモーションを行った例もあり、「The First and the Last」では特設サイトの合計アクセス数が600万以上にもなった。

 日本企業が著作権を持つ番組でも「しあわせ家族計画」などの成功例があるが、現在フォーマット権を提供しているのはほとんどが欧米の企業だ。中国テレビ業界が求めるのは、ユニークなアイデアと斬新さを持ち、コンパクトにさまざまな要素が取り入れられ、華やかな舞台セットを備えた番組。現在人気の欧米のコンテンツはパッケージが華やかであり、それが我々にとっても視聴者にとっても、大変魅力的に映る。

2.海賊版問題も改善し、正規の海外ドラマ配信も定着

何 暁輝:

 中国では海外のドラマが非常に重要な役割を果たしている。1981年ごろの改革・開放政策をきっかけに海外ドラマの購入が本格的になり、1995年から日本、2002年から韓国、2008年からはタイのドラマも放送。現在は視聴率などを意識し、より系統だった編成が行われている。さらに、2004年にはインターネットなどのニューメディアが中国でも発展。従来型メディアのテレビでは海外番組の導入に制限もあったが、ニューメディアではそれがゆるく、若者を中心に視聴者がより多くの海外コンテンツに接することができるようになった。

 中国は長期にわたって海賊版の問題を抱え、それがWTO(世界貿易機関)加盟以降に問題視されてきたが、政府とニューメディア企業の努力で現在はかなり改善されている。2006年に情報ネットワーク配信権保護条例が公布されてから、200以上あった動画サイトは十数件まで減少。正規ライセンスを持つサービスが残り、違法サイトは市場からほとんど追い出された。専門知識を備えた弁護士と違法配信の調査スタッフによる著作権保護専門チームが組織されたり、法整備の面でも知的財産権の協定に関連して2回ほど改定が行われたりと、今後さらに知財保護は強化されていくだろう。

 この取り組みを受け、海外でも中国メディアと協力するケースが増加。現在はディズニー、タイム・ワーナーなどのアメリカ企業や、韓国のSBS、MBCなども最新の番組を供給する提携を結んでいる。 一方で、日本のドラマ番組に対する需要は、ここ数年委縮している。現在、日本のドラマを見る機会は従来型メディアのテレビ、ニューメディア共に大きく減った。理由は十数年以上も日本からドラマがほとんど入ってこず、その間に他国のドラマの選択肢が増えたこと、視聴者の欲求が多様化したことで、日本のドラマが主流でなくなったからだと思われる。

 しかし、日本のドラマの家庭、愛情、青春ものといった要素は中国でも視聴者の共感を呼びやすく、需要そのものはかなりあるはずだ。「聖闘士星矢」「スラムダンク」「ドラえもん」などのアニメ作品も、小さいころから親しんでいる者が多い。だが、正規版の権利を受けておらず、違法サイトを通じて見るしかないケースも多い。

3.ネット連携を重視した、日本企業によるコンテンツ提供の実例

城田信義:

 我々が手掛けているコンテンツは、東南アジアや中国でも人気が高まりつつある「ジャパンカジュアル」と呼ばれる渋谷の若い女性のファッションカルチャーだ。日本のテレビ放送用にコンテンツを制作し、それを中国向けにローカライズして現地の日本チャンネルで放送。そこから、ネット動画として配信する手法を取っている。

 中国の学生に対する調査では、彼らはネット接続時間のうち40%をSNSや中国版TwitterのWeiboに遣い、20%をオンライン動画の視聴、10%をショッピングに費やしているという結果が出ている。そこに日本のファッションコンテンツを投入し、日本発のファッションが好きな人々のコミュニティを形成、ひいては日本が好きな人々のコミュニティを広げようという狙いだ。

 現時点での活動はテストランの状態だが、Weiboで番組の公式アカウントを開設したところ、すでに6万人ほどのユーザーが登録している。本稼働時にはクールジャパンの女性版といえるような日本的な付加価値を持つコンテンツを送り出し、ソーシャルコミュニティ内の独自コンテンツとしてプロモーションを実施する。番組と関連する洋服などの商品購入を期待するほか、「実物を買いに渋谷に行く」など、観光産業にも波及するような良い循環が起こることも期待している。

4.世界市場への展開も見据える中国国産ドラマ

羅文:

 ドラマ制作には政府としても力を入れており、2010年には1万8,000シリーズを制作し、今年は2万を突破する見込みだ。タイトル数では世界一の規模となる。しかし、中国のドラマは原則としてプライムタイムに放送され、若手の作品は夜10時以降の深夜の放送になりがちである。結果、1局あたり1日1~2作品となってしまう。放送チャンネルのキャパシティは8,000シリーズほどのため、各テレビ局はターゲット層や視聴率を考慮して作品を選択する。

 中国の国産ドラマは輸出も行われており、台湾、香港、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポールなどのアジア地域が主な対象だ。中国のすべてのテレビドラマは、制作段階で政府が政治的・ポルノ的な問題がないかどうか審査を行っている。中国国内で放送されたかどうかを問わず、完成し版権が認められたものを海外のテレビ局が購入すること自体は問題ないはずである。

 日本も輸出先の候補だが、視聴者の目が肥えていることに加えて放送形態上の問題もあり、なかなか難しい。中国のドラマは非常に長く、1作品あたり30シリーズが当たり前。毎日放送される連続ドラマ形式も多く、日本の視聴者にはそのスタイルは合わないのではないかと思う。番組購入の問題以前に、日本で中国製ドラマのニーズがあるかどうか。これは100%ビジネスの問題であり、市場が決めることだろう。

5.ニューメディアにおける中国の番組収入モデル

羅文:

 インターネット上のテレビ番組配信において、中国と日本ではやり方が違う。日本のネット動画配信では、番組を見たユーザーが視聴のたびか、月ごとに料金を支払う形式が当たり前だ。一方、中国では複数のポータルサイトが競争しており、ユーザー獲得のためにテレビ番組の視聴が無料であるケースが多い。また海賊版を含めて、早期からのネットユーザーに無料でドラマ作品を見る習慣がついてしまっているという背景もある。例外として、ハリウッドで上映されたばかりの映画などは、一定期間、料金を支払って配信・視聴される形も取られている。

 収入については広告で賄うケースが多く、番組の冒頭と、途中で再生をストップした際にコマーシャルが流れる仕組みが、ほとんどの動画サイトで取られている。この形式に合わせ、ネットユーザーの習慣にマッチする3~15分ほどのオリジナルドラマをサイト運営企業が作るケースも一般的だ。

何 暁輝:

 中国の最新の統計では、テレビ番組の視聴量について、テレビで見ている場合は30分ほどだが、インターネットでは3.2話ほどという結果が出ている。インターネットでテレビ番組を見るユーザーは16歳から40歳、ホワイトカラー層で経済的に豊かな人々であるのに対し、テレビを見るのは40歳以上の女性がメインで、ネットユーザーより所得は低いと見られている。また、ネットではアクセス情報によってユーザーの視聴分析が行いやすいため、企業が広告モデルを設定しやすいという利点がある。

 一方で、中国ではニューメディアが著作権物を扱う際のコストが非常に高くなっており、今いちばん高いものでは160万人民元、以前の800倍にもなるケースが出てきている。このコストの高騰は、中国のニューメディアが非常に成長していることを表すものでもあり、今後もどんどん上昇すると思われる。中国のネット配信は広告とアクセス率による収入に加え、今後はYoukuのNASDAQ上場のような方法で資金を集めるケースも増えていくだろう。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum 2011
会場
六本木ヒルズ49Fオーディトリアム(港区六本木)
開催日
2011/10/24
主催
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)