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イベントレポート:激変する国際コンテンツ流通産業~放送からデジタル・マルチプラットフォームへ~
概説
 国際テレビ芸術科学アカデミー会長のフレッド・コーヘン氏と、元NHK会長の海老沢勝二氏という日米テレビ放送業界のキーマンが、メディアの急激な変化やコンテンツの重要性、そして将来のテレビ界における人材の育成などについて語った。
内容

登壇者

フレッド・コーヘン/Fred Cohen

国際テレビ芸術科学アカデミー 会長

海老沢勝二/Katsuji Ebisawa

元NHK会長

1.大きく変化していくテレビ産業

フレッド・コーヘン:

 テレビ産業は、世界中でさまざまなスピードとタイミングで動いている。そういった状況では、コンテンツを持っていることと配給のルートを押さえていることが重要になってくる。リビングルームまでコンテンツを配給することはもちろん、コンピュータやiPad、iPhoneなど多くのものがある中で、いかにそのアクセスを獲得するかが鍵となる。

 コンテンツの需要と供給のバランスを保つことが必要で、大きな容量があるのであれば、コンテンツ力がより増すわけである。一方で、キャパシティが限定されると、配給が力を得る。つまり、チャンネルは配給ルートを何とか確保しようと、しのぎを削ることになる。

 アメリカでは、1970年代後半に、ファイナンシャルシンジケーションルールが定められ、ネットワークの番組製作・流通の独占が禁止された。これにより、シンジケーションビジネスは発達していき、現在も依然として強い力を持っている。シンジケーションの収入は売上から発生し、キャッシュに加えて広告費も得ることができる。市場でコンシューマープロダクトにスポット広告を打って、出稿料やバーターを得るのである。地方局の収入が減っている現在、番組製作に経費をあまり使えないため、広告を流すことで広告費を得るためにシンジケーターは削られ、キャッシュが得られない状況になっている。また、クロスプラットフォームでの展開も見られる。ひとつの番組が、SNS、Facebook、コンピュータ、携帯電話でも見ることができるのだ。このように、テレビ業界の状況が変わってきている。

海老沢勝二:

 放送の分野で最も顕著な動きは、インターネットの急速な普及である。特にこの10年、放送と通信の融合をどうするかという議論から、既に融合ではなく一体化の方向へ進んでいるほど、インターネットのインパクトは強いものがある。

 また、テレビは「見る」ものから「使う」ものへと大きく変わった。番組のコンテンツが勝負の決め手であり、多チャンネルの中で勝ち抜く、質の高さが重要となってくる。そして、今後はそれを再活用し、さまざまなところに提供していくシンジケーションモデルに移っていくだろう。

2.フォーマット、シンジケーション、3Dテレビの可能性

フレッド・コーヘン:

 国際テレビビジネスの人間として、日本は大きなフォーマットにおける成長の可能性があると思っている。日本のテレビフォーマットは、ユニーク、ファスト、ファンであり、最新鋭、カラフル、クリエーティブという側面もある。そうしたフォーマットの良さを世界中で使うべきである。そして、フォーマットで成功するためには、より多くのフォーマットを開拓することだ。ただし、量よりも質が肝心である。国際提携の増強も重要で、それによってコストを下げ、新しい売上の創出ができる。

 新しい進展としては3Dテレビがある。今後、3Dテレビの影響は大きくなっていくだろう。眼鏡をかけるのが面倒、番組数が不十分といった問題はあるが、今後、特にオリンピックをはじめとするスポーツ番組などで躍進が期待できる。

海老沢勝二:

 シンジケーションは、日本ではなじみが薄い。著作権や権利関係が非常に難しく、なかなかクリアされないことが原因だ。権利関係をきちんとクリアしないと、シンジケーションビジネスといっても、マイナス面が出てくるだろう。放送や通信事業を含めた関係者が、権利関係や技術に精通していくだけでなく、個人のプライバシー流出やコンピュータウイルスの危険性などを、国際間で話し合って協力関係を強めていく必要がある。新しいメディアができることでのメリットとデメリットのバランスをどう取るかを考えながら、シンジケーションビジネスを展開しなければならない。

 3Dテレビは、現状ではソフト、コンテンツが少なく、質の面でも十分ではないため、伸びていくのはこれからだと思われる。人体への影響についても慎重に検討し、視聴者が安心して見られるようなものにする必要がある。

3.テレビ業界の将来について

フレッド・コーヘン:

 将来、テレビ業界全体が伸びるためには、新しい人材の開発が必須である。それには、重要な5つのポイントがある。

  • クリエーターと経営者の素養を持つ人材の育成と保有
  • 新しい次世代メディアリーダーの創出
  • デジタルとテクニカルのエキスパートの育成
  • クリエーター、制作者、経営者の国際交流・交換の拡大化
  • 海外市場での日本の人材、機材の認識促進
これらが、日本テレビ業界の発展の重要な鍵となっていくだろう。

海老沢勝二:

 インターネットテレビに象徴される、いわゆるコンピュータ系が急速に展開している。それらが世の中にどこまで受け入れられるか。また、既存の地上波放送、あるいはBS、CS放送にどのような影響を及ぼすのか。更には、ニューメディアが出てきたために、新聞の将来や雑誌などの紙文化はどうなるのか。新しい技術開発によって、他分野でも違った競争をしていかないと生き残れない状況になっていると感じている。

 
基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 想海樓ホール(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/27(水) 14:00 - 15:30
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン