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イベントレポート:アニメ・スピードピッチ in Tokyo 2010 & ピッチングの極意 北米市場売り込みのための戦略指南
概説
 翌27日には、六本木の政策研究大学院大学で、ユニジャパンエンタテインメントフォーラム2010のプログラムとして、セミナー「ピッチングの極意:北米市場売り込みのための戦術指南」が行われた。前日までのスピードピッチの内容を受け、同じ5名のプロデューサーによって、北米デビューを志す日本のクリエーターに向けたピッチングの極意が紹介された。
内容

登壇者

ジェイ・バスティアン/Jay Bastian

Warner Bros. Animation バイス プレジデント オブ オリジナルシリーズ

デレック・リーブス/Derek Reeves

Corus Entertainment / NELVANA マネージャー オブ インターナショナル コプロダクション

カーティス・レラッシュ/Curtis Lelash

Cartoon Network ディレクター オブ コメディ アニメーション

アーロン・バーガー/Aaron Berger

Chatrone 代表パートナー

エディ・カックス/Eddie Cox

Walt Disney Television International Japan バイス プレジデント アンド ジェネラルマネージャー

1.アニメ業界の海外向け機運の活性化を期待した「スピードピッチ」

 「アニメ・スピードピッチ in Tokyo 2010」において、ピッチを行った日本のクリエーターは計50組で、複数名参加は13組だった。 内訳は25組が演出(監督、ディレクター)で、本イベントの主要な対象者であるアニメ監督が、自分の企画を持って応募したケースが半数を占めた。その他の参加者は、制作が12組、作画(アニメーター、CG制作などの作画一般を含む)が11組、脚本が2組だった。

 参加者を業界別にみると、アニメ業界プロパーが19組、アニメ業界その他が11組、CGが10組、児童・教育が4組、ゲームが2組、その他が4組となった。参加者は一回6分間という制限時間内で、通訳を介してピッチし、プロデューサーひとりずつに対して、計5回を連続して行った。企画内容の傾向は、ほとんどの企画が小学生を含むファミリー層をターゲットとしていたが、中学生以上を対象とした企画が5件、20代~30代の大人向けの企画が1件、老人向けの企画が1件あった。企画ジャンルは、アクション・SF系、動物系が半数以上で、それぞれ16件と12件であった。その他、魔法・ファンタジー系が8件、ナンセンスコメディ系が6件、その他(音や色をテーマにしたアート的な企画や教育目的の企画などを含む)が8件という結果だった。

 ピッチの手法には個人差があり、複数使用を含む調査結果ではあるが、最も多かったものが企画書や設定画・イメージボードなどであった。動画を使用したクリエーターも多く、動画再生機材はiPadとノートPCの割合が1:2程度であった。何も使わずに語りだけでピッチした人や、ガンプラや人形を持ち込んだ参加者もいた。

イベント後に行われた参加者アンケートでは、「有意義な企画だった」と満足する声が多く寄せられたが、「通訳を通して行うピッチの難しさ」についての意見があったことも印象的だった。限られた時間内に通訳を経由することは時間のロスにつながり、「思ったより時間が必要だった」「最終的には自分自身が英語でピッチする必要がある」と感じる人が多かったようだ。

 今回の試みは業界の海外向け機運の活性化につながる、価値ある第一歩だったといえる。しかし、参加者の企画の半数以上は北米放映向けとしては適さないという見解が海外プロデューサーたちから出されており、これは真摯に受け止めなければならない事実だ。今後、同様のイベントを行う時には、明らかに適さない企画は外していくような、事前の絞り込み操作を検討する必要がある。また、プロデューサーたちがこれまでにない斬新な企画を求めていることは事実であり、北米では考えつかないような突き抜けたアイデアが求められている。

 「アニメ・スピードピッチ in Tokyo 2010」の翌日に、ユニジャパンエンタテインメントフォーラム2010のプログラムとして行われたセミナー「ピッチングの極意:北米市場売り込みのための戦術指南」では、同じ5名の海外プロデューサーによる意見交換が行われた。 前日の感想を交えながら、日本人によるピッチの印象や北米デビューを志す日本のクリエーターたちに向けた「ピッチングの極意」が紹介された。

2.チャンネルの特徴を熟知する

ジェイ・バスティアン:

 アメリカでは、より具体的なことを求められる。例えば、ワーナー・ブラザーズ・アニメーションのアニメはDCコミックをベースにしたもので、「スーパーマン」や「バットマン」といったアクションショーがある。同様にカートゥーン・ネットワークであれば、ディズニー・チャンネルなどがある。それぞれにはブランド、そして独自の感受性がある。つまり、企画はチャンネルの感受性に合っている必要があり、ピッチを行う人はそうした感性を持って売り込みできるかどうかが問われるのである。「誰が買うのか」、「誰が買ってくれそうなのか」ということを考えなければならない。

 また、「ターゲットを知ること」も重要である。チャンネルごとに対象とする視聴者がはっきりしているため、明確なターゲット像を持つ企画でないとピッチは難しい。例えば、視聴者が子供であれば、「どういう世界を作れば子供たちが楽しめるだろうか」という視点を持つということだ。子供が「僕はこういう風になりたい」、「こういう世界を作りたい」という気持ちになってくれるような企画でピッチを行わなければならない。

エディ・カックス:

 ピッチを行う時は、相手やその局のブランドとカラーを事前に学んでおくことが必要であるが、それらを考えずにピッチする人が多いように思える。

 事前の研究がいかに大切かを伝えるエピソードがある。アジアのとある国が、ターゲットが13歳~18歳ぐらいで、素晴らしい映像でストーリーの面白いアクションアドベンチャー系の作品をある国へ売りたいと申し出たことがあった。その国の年齢別の視聴率を聞いてみたところ、回答がこなかったので調べてみたら、彼らがターゲットとして考えていた年齢層は全くテレビを見ないという事実が判明した。もちろん、この企画はうまくいかないという結論に至ったわけだが、まさにテレビ局が希望するコア年齢の視聴率を念頭に置くべきであった例であり、事前の研究が大切だと言う裏付けになるエピソードであった。

カーティス・レラッシュ:

 企画を見極める際に大きな鍵となるのは、企画が作品として機能するかどうか、実現化できるかどうかということである。単にクリエーティビティがあるだけでは成立しない。 時として、我々が求めているものと必ずしも一致しないこともある。例えば、「スポンジ・ボブ」のように誰もが期待していなかった作品が、大ヒットすることも実際にあるのだ。オリジナリティとエクスキューションのふたつをうまく組み合わせるということである。

3.キャラクターやストーリーを熟知する

エディ・カックス:

 日本で受けるピッチは、全体の概念のような抽象的な説明であることが多いように思える。主人公は誰なのか、そのストーリーがどう展開されるのかということがなかなか伝わってこない。

 最も強力なピッチは、クリエーターがキャラクターやその周りの世界、エピソードを熟知しているものである。つまり、シリーズ全体に対して関与しているかどうかということである。キャラクターがショーの進展と共にどう変わっていくのかを、最初からきちんとつかんでいなければならない。

アーロン・バーガー:

 ピッチはキャラクターの具現化が鍵である。主人公は誰で、何が特徴なのか。例えば、音楽好き、スポーツ好き、映画スターは誰が好きなど何でもよいが、そのキャラクターを単なるキャラクターではなく、生身の人間として感じさせるようなものでなければならない。キャラクターに人としての体温を与えなければいけないわけであるから、キャラクターを取り巻く世界もはっきりしている必要がある。視覚的には楽しいストーリーで、映画的なアプローチができるかもしれないというようなものでも、文化の一部になることが大事である。そのためには、キャラクター個人のパーソナリティ、つまり、性格を際立たせなければならない。コメディでもアクションでも同じだ。すべてはキャラクターから始まるのである。キャラクターを通して思わずその世界に引き込まれてしまうような、オリジナルなキャラクターが必要となる。

 ピッチのように限られた時間の中で、すべてを説明することは難しい。コンセプト的なところから入るのではなく、私としては「なぜそのキャラクターに愛着がわくのか」という点をピッチしてほしいところである。特に、コメディではキャラクター間の関係も非常に重要となる。これは、アクションショーよりも重要である。

カーティス・レラッシュ:

 ピッチでは、キャラクターを理解しきった上で話すことと、どういうストーリーを自分が語りたいかを熟知していることが重要である。単に面白いことだけを語るのではなく、自分自身を投影した形で語るということだ。

 「アニメ・スピードピッチ in Tokyo 2010」の会場では、売り込みたい企画のコアな部分ではなく、世界観を語る傾向が見受けられた。しかし、我々が知りたいことは、登場人物についてはもちろんだが、どういう場所へ行き、何をするのかというストーリーラインである。自分と見る人に一体感と驚きを与えられるようなもので、ほかのショーでは見られないような視点を提示してほしい。いつも壊れてばかりいる宇宙船というのは見たことがないけれども、そういったものが面白いのだ。「もう見たことがある」というものでは困る。

4.ピッチの具体的な手法

エディ・カックス:

 ピッチの具体的な手法におけるアドバイスとしては、音楽やいろいろなものを盛りだくさんに使った派手なピッチが必ずしも良いとはいえないことだ。アーティストやライターが本当に情熱を感じているかどうかは、派手な演出なしでも我々に伝わってくる。

デレック・リーブス:

 ピッチは限られた時間内に効果を出さなければならない。だから、「芸術的なアイデアを示すもの」「我々が共感できるようなアイデアがあるかどうか」「プロダクションに対してどういった貢献ができるか」という点に集中して話せばよい。

 ピッチの手法として、言葉や1枚の絵を使って語るだけでなく、映像をうまく利用するのも良い。目に見えるイメージがあることは、ピッチにおいて重要である。なぜなら映像がなければ、人によって違う解釈をすることもあるからだ。キャラクターの特徴や姿を映像で見せれば、十分に効果を期待できる。映像を見た上で、企画を実行できるかどうかを判断する場合もある。

5.最終的にはクリエーター自身

アーロン・バーガー:

 アイデアは二の次である。まずは「人」であり、クリエーター自身のキャラクターである。何を差別化して企画し、売れるアイデアを生み出すのかはその人自身によるわけである。「子供が大好き」だとか、「子供たちのために何かしたい」、「子供たちを育てていきたい」という気持ちが大切だ。アメリカなどでも小学校入学前の子供向けの番組があるが、それらは子供たちみんなに笑ってもらいたいという気持ちを持っている人たちが作った、心のかよった番組なのである。

 仕事のように考えて、就職活動の面接のようなピッチをするとうまくいかない。例えば、「この人とお酒を飲みたい」という気にさせるような、クリエーターの個性を感じるようなピッチをするべきなのである。

エディ・カックス:

 より強いピッチをするためには、やる気や情熱を具現化することだ。我々はアイデアだけを買うのではない。そのアイデアを一緒に実行できる人のアイデアを買うのだ。売り込もうとしているアイデアを擬人化する、人の姿を与えるということである。

 ピッチをする時や新しい企画を考えている時は、どこの市場を優先するのかということをきちんと事前に決めるべきだ。「日本とアメリカの両方で成功させたい」ということだと、どちらかが犠牲になるのではないだろうか。ビジネス上では、まずはどちらのマーケットを優先するのかを、企画やコンテンツ、ビジネスプランに対して決めるべきであろう。多くのクリエーターが各国のマーケットで成功する夢を持っているだろうが、現実的に考えてどちらの市場が大事なのかという認識を、クリエーターとビジネスパートナーの間で統一するべきだと最後にアドバイスしておきたい。

基本情報
事業名
アニメ・スピードピッチ in Tokyo 2010、UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
ホテルオークラ東京 別館2階小宴会場 撫子・桔梗(東京都港区虎ノ門)、政策研究大学院大学 想海樓ホール(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/25(月) 26(火)11:00 - 17:00、27(水) 11:00 - 12:30
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン