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イベントレポート:映画ジャーナリストディスカッション~ヨーロッパ映画の今と日本市場~
概説
 長年にわたり世界の映画ファンを魅了してきたヨーロッパ映画だが、現在の日本市場では邦画が中心になりつつあり、カンヌ国際映画祭の受賞作品でさえも商業的に苦戦している。どうすればヨーロッパ映画の輝きを日本市場で取り戻せるのか、気鋭のジャーナリストたちが語った。
内容

登壇者

ジャン・ミシェル・フロドン/Jean-Michel Frodon

元「カイエ・デュ・シネマ」、ジャーナリスト、ディレクター

リザ・フォアマン/Liza Foreman

「ニューヨークタイムズ」、「カンヌ マーケット ニュース」、ハリウッドレポーター

ヤン・シュルツ・オハラ/Jan Schulz-Ojala

「ターゲスシュピーゲル」編集者、評論家

マーク・アダムス/Mark Adams

「スクリーン・インターナショナル」チーフ評論家

1.自国作品が強いことは映画人口の増加につながる

ジャン・ミシェル・フロドン:

 ここ数年、邦画が日本市場において勢いを増している。地元の作品が強いということは、映画人口の増加につながるので、外国作品も見に来てくれる可能性が高くなり、悪い話ではない。 日本市場では、アジア作品も随分活発になってきている。ここ20年くらいの数字を見ると、それほど多くなかった観客数が今は増えている状況にある。現在は、ヨーロッパよりもアジアの作品数の方が多い。ヨーロッパの作品数は、ここ10年くらいは年間80本程度だが、アジアの作品数は100本を超えており、その半分は韓国映画である。ヨーロッパのシェアが下がったのは、韓国などアジア映画の人気が高まったからだ。

 ヨーロッパの作品はアート系の印象が強いと思われがちだが、実はジャンルやスタイルはさまざまである。日本市場においては、フランス映画がとても強い。日本で配給されるヨーロッパ作品といえば、3割がフランス映画である。映画の世界が多様化したため、ヨーロッパのシェアが小さくなっているといえるが、合作が増えている昨今、国別で分析するには限界があるだろう。

 邦画は、テレビ番組から映画になったものや既存のマンガや小説がベースになっているものが多く、オリジナルの脚本の映画が減っている傾向にある。市場で売れる作品を作ることが現在の主流だと思うが、観客からすれば同じような作品が多くあるので、このままでは「本当に面白いものは映画には期待できない」となってしまうのではないだろうか。

2.映画祭出品作の可能性と問題性

ジャン・ミシェル・フロドン:

 市場における今後の映画の行方を見据えた時、映画祭への出品も成功するためのひとつの手段になるだろう。主流の作品であれば、公開を判断する際に映画祭は関係ないが、主流になれない作品にとっては映画祭が役立つ。それは、作品の宣伝になる上に、サポートにもなるからだ。映画祭公開作品という肩書が付くと、市町村などからの受けも良くなるし、映画ファンだけでなく、さまざまな人々が集まってくる可能性がある。

ヤン・シュルツ・オハラ:

 映画祭は、ほかの国の映画スタイルを発見することもできるので、その役割は重要だと思う。例えば、宮崎駿監督はベルリン国際映画祭で成功した。2002年に『千と千尋の神隠し』でアニメとしては史上初となる金熊賞を獲り、『崖の上のポニョ』もドイツで大ヒットした。このように、宮崎アニメはドイツで非常に人気があるのだ。

 映画祭で見いだされはしたが、作品によっては公開までに時間が掛かるものもある。それは、ヨーロッパの映画が日本で公開されるまでに2年程掛かってしまうことや、日本映画がドイツで公開されるまでに時間が掛かることと一緒である。

 また、日本ではアメリカのアカデミー賞を獲った作品は興行成績が上がる。やはり、観客たちはアカデミー賞を重視しているわけだ。 マーク・アダムス: ヨーロッパの大きな映画祭に関しては善しあしがある。賞を獲ると作品は注目されるが、その作品の価格がどこの市場でも高くなってしまうことがある。つまり、注目は集まるが買われにくくなるという現象が起きる。さらに、作品が市場に到達するまでに2年程掛かってしまうという時間的な問題もある。 もちろん良い側面もあり、映画祭で評判になった作品がカルト的な人気を誇ることもある。

3.それぞれの国における映画事情

ジャン・ミシェル・フロドン:

 フランスではデジタル上映やデジタル配信がうまく機能しており、現在はアナログからデジタル上映へのシフトが行われている。ただ、コストが掛かるため、多くの小さな劇場が消えている。打開策として、例えば配給会社が小さな劇場にフィーを払って、そのお金で新しいデジタル機器を導入できるようにするのはどうであろうか。このようなことは簡単にはできないだろうし、いろいろな障害もあるだろう。しかし、劇場の存在は重要である。

リザ・フォアマン:

 インディペンデントのプロデューサーのひとりである、サミュエル・ゴールドウィン・ジュニアとロサンゼルスで仕事をしたことがある。その時、ハリウッドは国を問わず、作品が良ければチャンスがあるということを感じた。アメリカは、海外の作品であっても常に良い映画を探している一方で、良い作品とはいえ、映画は公開してみないと分からないという考え方も持っているようだ。それはここ数年、映画ビジネスが急激に変わってきているからだという。 インディペンデント系や外国作品に関しても、かなり変化があるように感じる。ミニメジャーといった撮影所が閉鎖の憂き目に遭い、インディペンデント系や外国作品の成功が難しくなってきたことは事実である。

ヤン・シュルツ・オハラ:

 ドイツは助成金が出るので、制作者にとってとても良い国だと思う。自分たちですべての資金調達をしなくてもいいわけであり、いろいろな形で国の補助を取り付けることができる。ただし、制度が複雑なので申請は簡単ではない。

 国から資金を出してもらえると分かれば、制作者によっては作品に対して甘くなるという問題が出てくるかもしれないが、例えば美的なものを追求するような、実験的な作品に挑戦しやすくなるのも確かだ。つまり、興行成績だけを狙わない、アート系のアプローチができる利点がある。興収のために、台本もストーリーも書き換えるようなやり方をしなくて済むのは良いことだ。映画を開発していくという意味では、国家補助が付いていると役に立つ。

マーク・アダムス:

 イギリス映画がやや低迷しているのではないかという話も出ているが、制作者たちは健闘しているし、上質のものを生み出してもいる。カンヌ国際映画祭で賞を獲る作品もあり、ケン・ローチ監督やマイケル・ウィンターボトム監督もなかなかのペースで制作している。リドリー・スコット監督も制作はイギリスベースで行っているし、ダニー・ボイル監督の新作もとても良いと聞いている。このように、イギリス映画は依然としてエキサイティングな状況である。しかし、若手のアート系の監督たちはデジタルで制作するため、作品の数は多いが、配給までいくものが少ないという問題も浮上している。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 会議室1A-C(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/27(水) 10:30 - 12:00
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン