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イベントレポート:マネキンドラマ『オー!マイキー』の海外展開について
概説
 外国人家族が主人公のマネキンショートドラマ「オー!マイキー」は、製作当初から国際展開が考えられており、数々の海外映画祭に出展されたほか、フランス・ドイツ・韓国・アメリカ・イタリアに加えて南米での放送が決定するなど、世界中で展開している。「オー!マイキー」のプロデューサーである泉 正隆氏が、国際展開を視野に入れた作品作りについて語った。
内容

登壇者

泉 正隆/Masataka Izumi

株式会社エス・エス・エム 代表取締役社長

1.各国の映画祭で注目される「オー!マイキー」

 「オー!マイキー」は、2000年にテレビ東京で放送されたバラエティ番組「バミリオン・プレジャー・ナイト」の1コーナーである「フーコン・ファミリー」が新シリーズとして独立したマネキンショートドラマだ。2001年4月に開催されたニューヨーク近代美術館の映画祭ニューディレクターズ/ニューフィルムズでは、第一作シリーズがプログラムの表紙だけでなくポスターにもなり、好奇心旺盛なニューヨーカーの話題を独占した。同年7月に開かれたカナダのファンタジア映画祭では最も革新的な映像作品に贈られるグラウンド・ブレイカーズ賞を、同年10月に行われたスイスのシネマ・トゥ・エクラン映画祭では審査員特別賞を受賞するなど、既に世界中の映画祭で称賛されている。海外映画祭の審査員の中には、選考用のVHSを自宅に持ち帰り、ホームパーティの時にゲストに何度も見せるほどのマニアが続出している。

 海外で作品として認められるまでには、映画祭へ出品して映像としての客観的評価を得る手法と、映像販売のための国際映像マーケットでの積極的な紹介という手法の二本柱で展開した。 日本のテレビ番組で放送されていたものは、毒がきつくてエロティックな内容が数多くあったが、斬新な面白さが海外でも受け入れられるのではないかと思い、気に入ってもらえそうなものを選んで22分にまとめ、英語字幕を付けたものを作った。そして、海外映画祭の出品につなげるために、川喜多記念映画文化財団に出来上がった英語字幕の作品を見てもらい、海外の映画祭関係者に見てもらえるようにお願いした。川喜多記念映画文化財団が、その映像をニューヨーク近代美術館の映画祭ニューディレクターズ/ニューフィルムズの担当者に見せたところ、2001年4月に開催される同映画祭での上映が決まり、更にはパンフレットの表紙にもなったのである。

2.人形浄瑠璃とマネキンドラマの共通点

 「オー!マイキー」を海外展開させようと思ったきっかけがある。それは、日本の伝統芸能である人形劇の「人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)」だ。新しい映像をこれからどうやって作っていくかを悩んでいた頃、たまたま文楽(ぶんらく)で人形浄瑠璃を見る機会があった。その時の文楽は人間国宝として認定された太夫(だゆう)、三味線、人形遣いによるもので、熟練の技が三位一体となることでいきいきと人形が動き出す様子に感動を覚えた。この感動は、初めて「フーコン・ファミリー」を見た時と同じものだった。

 江戸時代に生まれた人形浄瑠璃が今もなお人々に支持されていることに対して、時代を越えたアートの力があると感じた。「もの」であるはずの人形に命が吹き込まれ、物語を紡ぎ出す。手法としては、人形浄瑠璃も「オー!マイキー」も同じだ。そして、その様子に見る人が驚きと面白さを感じる感覚は、日本人のみならず、世界共通のものだと直感した。近年は次々と新しいコンテンツが生まれ、入れ替えのスパンが短くなりつつあるが、「オー!マイキー」は10年以上も海外市場から支持され続けている。もしかしたら、当初はマネキンドラマというジャンルの斬新さに興味を持ってもらえただけなのかもしれないが、人形浄瑠璃のように高いアート性が宿っているからこそ、息の長い人気を得たのだと考えている。

3.海外での映像販売のきっかけ

 2001年2月のベルリン国際映画祭の際、日本映画を紹介するブースで「フーコン・ファミリー」というタイトルで制作した26分のVTRを紹介する機会がたまたまあった。もともとこのVTRはほかの映画祭向けに作ったものだったのだが、この時、フランスのテレビ局ARTE Franceの担当者の目に留まり、フランスとドイツでの放映が決まった。これが最初の映像販売のきっかけだった。 当初は、マネキンドラマが海外で受け入れられるか試すような状態であり、本格的な海外展開を考えたソフトとして認識していなかった。しかし、ニューヨーク近代美術館の映画祭でもアメリカ人に人気があり、関係者にも好評だったため、海外でも人気が出るのではないかと予感した。

 その後、海外販売用のサンプル版として、ファミリークライシス、家庭教師、おじいちゃんおばあちゃんの3本のストーリーを英語吹き替えで作った。映画祭への出品は新作の必要があるため、「フーコン・ファミリー」から「ザ・フーコンズ」にタイトルを変更。川喜多記念映画文化財団の担当者が映画関係者に紹介したところ、特にベルリン国際映画祭の担当者に好評だったため、2004年2月に行われたベルリン国際映画祭のパノラマ部門へ日本のテレビシリーズとしては初めて正式に招待された。

4.韓国、アメリカ、イタリアへの販売展開

 2003年10月にフランスのカンヌで行われる国際テレビ番組見本市のMIPCOMで、TBSの番組を海外や国内の地方に販売しているTBSサービスによって「オー!マイキー」が大々的に紹介された。その理由は、アメリカ人を主人公にした作品だったためにアメリカへ売りやすそうだったことと、出演者がマネキンという斬新な企画が受けるのではないかと思ったからである。MIPCOMでは、TBSサービスがブースの前にマイキーのマネキン人形と看板を出して映像を紹介した。すると、韓国で「ポケットモンスター」の代理店などをしている韓国のDAIWON DIGITALの担当者の目に留まったのである。そして2004年5月1日から5年間、DAIWON DIGITALがDVDの権利を取得し、その後、韓国で「オー!マイキー」ブームが起こった。

 韓国の携帯電話の大手メーカーであるLGテレコムのコマーシャル契約も成立し、4パターンのCMが作られた。ソウルなどの大都市では駅貼り広告が展開され、2007年には再び「オー!マイキー」ブームが起こった。2007年以降の販売実績は、韓国でのIPTV、インターネットで配信されるテレビ番組の権利、DMB、デジタルテレビ放送の権利などのメディアでの再販売となっている。 アメリカへの展開も、2003年のMIPCOMがきっかけだった。初めはアメリカのMTVから問い合わせがあったが、MTVとは購入本数などの条件が合わず、契約は成立しなかった。その後、ADヴィジョンとパイオニアUSAの2社からオファーがあり交渉を続けていたが、両社ともなかなか引き下がらず、値段や条件がどんどんつり上がっていった。その結果、クリエーター側の希望をほぼかなえる予算が組まれたADヴィジョンに決定した。入念なボイスサンプルのチェック、ヒューストンでの4日間のアフレコ作業を経て、納品した。

 海外版を製作するに当たっていちばん大切にしていたテーマは、英語版をしっかり作るということだった。例えば、日本語をアフリカのどこかの言語に訳すことは大変だが、英語からであればアフリカの言語にもしやすいはずだ。各言語へ展開するとしても、英語版からであればニュアンスを伝えやすいだろうと考えていたからである。

 その後の展開としては、2010年初めに南米地域に向けて映像販売をする会社から問い合わせがあり、同年5月に契約が成立した。それに続いて北米地域での新規依頼があり、前向きに話を進めている。イタリアへの展開のきっかけも、2003年のMIPCOMであった。イタリアのMTVの担当者が大そう気に入ってくれたため、イタリア語版の放送権をMTVに譲渡した。この時はアメリカ版が完成しておらず、イタリア語を理解できる人間がいなかったので、出来上がりは全く違うものになる可能性はあったが、正式な承認なしで販売した。2006~2007年頃のことだが、イタリアで日本人観光客が「オー!マイキー」とコムサデモードがコラボレーションしたバッグを持っていたところ、多数のイタリア人から「マイキー、マイキー」と言われたという話を聞いた。イタリアではMTVの映像のおかげで人気を得たといえるだろう。

 日本のアニメが世界中で売れている中、「オー!マイキー」が各国で受け入れられているのは「少し視点の違うものが売れる時代が来たから」だと海外販売担当も話している。こちらから売り込んだのではなく、向こうから依頼が来ていることからも、毛色の変わった映像が海外で求められていることがうかがえる。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 研究会室4A(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/27(水) 10:30 - 12:00
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン