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イベントレポート:Producer's Choice~企画成立までの資金調達の道のり~
概説
 映画製作における資金調達の方法としてはさまざまな選択肢があるが、メリット、デメリットを考えながらどのように調達を行い、企画を成立させればよいのか。3名の登壇者がファンドにおけるキーワードなどを説明しながら、資金調達の実態を語った。
内容

登壇者

楠 純子/Junko Kusunoki

フィルム・ファイナンス・ジャパン有限会社 代表取締役

根津奈都子/Natsuko Nezu

株式会社エンターテインメント・パートナーズ アジア 代表取締役

カラム・グリーン/Callum Greene

プロデューサー

1.資金調達におけるキーワード

楠 純子:

 国際市場をターゲットにした作品は、国単位でセールスを行い、出来上がった作品を見てから買うのが一般的である。それに対して、出来上がる前の企画の段階でセールスすることをプリセールスという。ほとんどの場合、ライセンス契約を結ぶことが多く、権利は最終的にプロデューサーの手元に残る。作品が完成する前に一定の収益が見込め、資金調達の一環として組み入れることができるというメリットがある。

 資金は、スマートマネーとソフトマネーに大別される。スマートマネーとは調達できたお金のことであり、一般的にはスタジオやメディア系からの出資、投資、またはプリセールスによる入金や銀行ローンなどを指す。投資家からの出資や、たまたま自己資金があるような場合も、スマートマネーという呼び方をする。これに対し、ソフトマネーとは、投資、ローンの返済、回収義務のない一種の助成金、税金還付などであり、基本的に政府の支援政策から出される資金を指す。それぞれのコンビネーションをうまく組み合わせていくことで、欧米のプロデューサーは魅力的なビジネススキームを実現しているといえる。

根津奈都子:

 インセンティブとは、必ずしも税金や現金の払い戻しということではない。国や地域でインセンティブを出しているところは、それぞれの州や地域が独自に行っているものなので、内容が変わることが多い。基本的にはフィルムコミッションなどで扱っているため、世界のフィルムコミッションのサイトから質問すると、その州の担当者に直接つないでくれたりする。まずは、そこから情報を得ていくというのもひとつの手だろう。

カラム・グリーン:

 現在、映画の資金繰りは非常に難しい。株式や銀行からの借り入れやプリセールスなどが、スマートマネーという最初の手持ち資金になる。その資金を最大限に活用しながらソフトマネーを探していくわけだが、これはフリーマネーであって、世界中を探せばいろいろある。スマートマネーをソフトマネーにいかに応用していくか、特に、映画に関する共同製作協定などがない場合なら、世界中を対象にして投資を最大限活用する方法を見いだすことが重要だ。昨今は通貨のマージン利得が減少しつつあるので、タックスクレジットやキャッシュリベートが意思決定のプロセスの中で重要な役割を果たしていくことになる。

 リベートがあることは手堅い要素であり、成功に導く重要な要因でもある。しかし、リベートがすべてではない。そこに入れ込むスタッフの「質」が重要なポイントとなる。スタッフの質が悪ければ効率も悪く、逆に製作費が高くついてしまうこともある。資金とクリエーティビティの総合的なバランスが重要になってくる。目先のゴールだけにとらわれず、ひとつのプロジェクトを成功させ、更にまた次のプロジェクトへという形で、次に継続していかなければならない。

2.インセンティブを使うことで受けられる恩恵

楠 純子:

 映画の資金調達において、日本ではメディア系のスポンサーから100%出資してもらうような形が主流だが、欧米では必ずしもそうではなく、さまざまな手法を使って資金調達を行っている。海外のインセンティブには、企画さえ条件に見合っていれば、日本人のプロデューサーであっても同様にアクセスできることが多い。うまく利用すれば、集めた投資金額にプラスアルファのメリットがあるので、検討していくべきだ。

カラム・グリーン:

 プロデューサーとして撮影を実現していくには、三つの点を重視している。まずは映画のテーマ。次いで、テーマに合わせたセット、スケジュール、出演者などを考え、そこから派生する制約条項を踏まえて撮影場所を決めること。最後に、インセンティブやリベートといった恩恵が使えるのかどうか。こういった点を照合して、バランスを見ながら判断していく。

 一般的にアメリカのクルーにとって、日本で仕事をすることはなかなか難しい。なぜなら、インセンティブがないためだ。現在は、撮影場所として日本は除外される状況にある。インセンティブがあれば、世界の映画製作関係者が日本を候補地として考え、日本の映画業界にも投資が行われるだろう。そうなれば、国内の人材を育成できるし、最終的には日本経済へも貢献することになるだろう。

3.日本の税制優遇の現状

楠 純子:

 日本で税制優遇を受ける場合、経済産業省だけでなく財務省との関わりも生じる。また、合作協定では外務省との絡みもあり、各省庁間の問題がネックとなって、いつ実現されるか分からない。しかし、積極的に動かそうという流れはあるようだ。

カラム・グリーン:

 日本はいろいろと困難な問題を抱えている。その状況が変わるまでは、やはり世界に目を向けてほしい。それが当面はベストであり、もしかすると唯一の選択肢なのではないだろうか。

 今回はインセンティブを中心に紹介したが、各プロジェクトはさまざまな方法で資金調達を行っている。テーマと制約がどう関わってくるのか、出演者も含めた諸条件を顧みてマーケットプレイスに目を向ける。それはプリセールスというオプションかもしれないし、映画の価値に対して銀行から借り入れをすることかもしれない。映画祭に出品することも、ひとつの手だ。場合に応じて、最適なものを判断していく必要があるだろう。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 研究会室4A(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/26(火) 18:00 - 19:30
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン