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イベントレポート:インディペンデントはハリウッドでビジネスになる
概説
 『ゾディアック』『シャッター アイランド』などのインディペンデント系映画を次々と送り出したフェニックス・ピクチャーズのプレジデントでCOOであるアーノルド・メッサー氏が、中国進出への意欲やインディペンデント系映画の開発における重要な点について語った。
内容

登壇者

アーノルド・メッサー/Arnold Messer

フェニックス・ピクチャーズ プレジデント&COO

1.中国マーケットとつながることの利点

 私は1979年からコロンビア・ピクチャーズ・テレビジョンでプロデューサーを務め、1991年にソニー・ピクチャーズ エンタテインメントと名称が変更された後も数々の作品を手掛け、1994年にフェニックス・ピクチャーズという製作会社を設立した。

 このフォーラムに参加する前に、私は中国へ行ってきた。目的は、中国との共同製作を提案することと、ビジネスを学ぶことのふたつだ。今、中国では映画配給が年間80%と大きく伸びているが、外部からの接触では、その14%程度のシェアしか取れないだろう。しかし共同製作になれば、その割合は変わってくるはずだ。インディペンデントにおいて、パートナーは平等である。私たちはスタジオを提供し、パートナーである彼らは配給先を提供する。こうした形にすれば、閉鎖されたマーケットにアクセスできると考えたのだ。

 中国の映画収入は、数年後、世界で第2位になるのではないかと見られており、既に10億ドル以上の興行収入が出ている。また、この8年間で一月当たり100軒もの新たな映画館が誕生している。このような成長には、誰しもが惹かれるものだ。

 中国以外の地域では、映画製作の状況が非常に厳しい。そのため、中国マーケットとつながりを持つことが、今後はますます重要になってくるだろう。

 中国との共同製作は、ヨーロッパ諸国やカナダといった国との典型的な共同製作とは、また違った意味を持つ。ヨーロッパ諸国などとの共同製作は、国から助成金を得るために行われるという側面がある。中国には国からの助成金はないが、いろいろな資本参加がある。そこがヨーロッパと中国との共同製作の違いである。

2.少ない開発費で手応えのある作品を目指す

 本当の意味で独立している、我々のような会社はとても少ない。インディペンデント系の多くの製作会社は、開発の資金などをスタジオに依存している。個人プロデューサーがスタッフを何人か雇ってカンパニーと呼ばれていることがあるが、これは実際にはプロデューサーひとりが活躍する会社ということになる。開発費用、映画製作の費用、いろいろなシステムの機能の仕方など、これらのほとんどをスタジオが握っている。

 1本の映画に対する企画製作費や開発費は、スタジオ平均で約100万ドルだが、それを超えるものも珍しくない。我々の場合、最初は少額からスタートし、完成度によって取り分を増やすということにしている。 少ない開発費で成功を収めた作品としては、『シャッター アイランド』がある。私は、この映画の脚本をとても気に入った。だからこそ、リスクを冒してでもプロジェクトを実現したいと思った。本当に優れていなければ着手しないし、他者から見て特別な作品だと思ってもらえるかどうかが私たちの価値判断なのである。

 日本は難しいマーケットになりつつある。10年前の日本なら簡単に売れ、予算の10%くらいはすぐに回収できたが、今は日本でヒットしない映画もあり、販売価格も下がっている。 韓国は今、良いマーケットだと思う。ハリウッド映画にも意欲旺盛だし、配給もうまくやる。 中国に関しては、定期的なビジネスとしてできるかどうかを見極めている状況だ。今のところはプリセールスを行ったとしても、興行収入のさまざまな規制があるし、輸入映画に対する制限も存在する。中国は、映画の完成品を見てから買うかどうかを決める傾向がある。

 とはいえ、インディペンデント映画は中国で成功する可能性があるだろう。中国で興行的に成功すれば多くの見返りが得られるし、我々もビジネスとして達成したいと思っている。インディペンデントは地元のパートナーを見つけやすいというメリットがあるし、中国側のパートナーとの交渉に関してもメジャー映画より柔軟に対応できる。

3.必要なものは優れたアイデアや脚本

 日本とアメリカ、そして中国が共同製作をすることは不可能ではないと思うが、それを実現するためには誰もが楽しめるようなストーリーが必要だ。しかし、日本人、アメリカ人、中国人のすべてから好評を得ることができるストーリーというのは、なかなか難しい。

 中国に対して、北朝鮮のスパイを悪役にした映画を提案したことがあるが、悪役としては受け入れられないと却下された。警察官も良い人でなければならない。連続殺人犯といったような過激な犯罪ものも駄目で、我々が選ぶ題材は受け付けてもらえなかった。だから、歴史的なストーリーに頼らざるを得ない。ただし、コメディに関しては受け入れられつつある。今は適切なプロットを見つけ出し、どうしたらうまくいくのかを模索している段階だ。

 企画を成立させるに当たって、5,000件ぐらいのアイデアや脚本、本のレビューなどに触れてきたが、その中で日本とは5本の映画を作っただけである。つまり、プロジェクトが認められる確率は非常に低いわけだ。我々はいつも良い素材を探している。これまで誰も手掛けたことのないストーリーを形にするには、優れた脚本が必要である。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 想海樓ホール(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/26(火) 18:00 - 19:30
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン