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イベントレポート:映像コンテンツと地域国際化
概説
 年々、日本のロケーションを採用する海外作品が増えているが、観光をはじめとした地域ビジネスへどのように発展させていけばよいのか。韓国ドラマ「アテナ:戦争の女神」のロケ地に採用された鳥取県を例に、行政の担当者を交えて、今後の課題や展望について語られた。
内容

登壇者

宮島秀司/Hideshi Miyajima

株式会社ブラ・インターナショナル 代表取締役社長

細羽 正/Tadashi Hosoba

鳥取県文化観光局 国際観光推進課 課長

1.レベルが高い日本のアニメ・ドラマ・小説

宮島秀司:

 私が今まで手掛けた「国際」と名が付く作品の事例では、小津安二郎生誕100年記念企画として台湾のホウ・シャオシェン監督と共に作った『珈琲時光』がある。これはホウ監督にプロデューサーになってもらい、監督のプロダクションと共同製作を行った。また、『八月のクリスマス』では、韓国のホ・ジノ監督とおよそ2年の時間をかけて脚本をキャッチボールして、韓国の映画会社と日本の映画会社がフィフティ・フィフティで組んで作ることができた。

 世界の映画人から見て、日本に対する最大の関心事はマーケットである。日本は小さな島国だが、ハリウッド映画はアメリカに次ぐ世界第2位の興行を挙げている。また、日本のアニメ、ドラマ、小説はストーリーがよくできており、キャラクターがしっかりしているので、コンテンツのレベルが高い。特に、コミックはヨーロッパで絶大な人気がある。そのようなコンテンツを、日本とヨーロッパで共同製作したらよいのではないだろうか。 ドラマにおいても国際的な流れがあり、日本のコミックが日本よりも先に海外でドラマ化されヒットするケースも出てきている。「花より男子」はその顕著な例である。台湾で先に火が付き、日本でもドラマ化し、更に映画化されて大きくヒットしていった。ひとつのコンテンツからさまざまな映像コンテンツが生まれているという意味では、アジア全域が賑わうよいケースといえる。 今後は、共同製作を目的とした文化交流が生まれると理想的だ。文化交流はいい換えれば人材交流であり、共同でひとつの作品を作り上げていくことをもっと積極的に行うべきであろう。

2.国際化の第一歩は人材交流から

細羽 正:

 観光庁では「スクリーンツーリズム」として映画やドラマを使って観光促進を行っており、その一環で海外作品のロケを誘致する動きがある。日本には、10年程前からそうした活動を進めてきたフィルムコミッションという団体がある。いろいろな省庁間による連携で作られ、現在は数として160まで増えており、国際化の動きの中でその存在は影響が大きい。一方で、活動がまだ受け身であるという課題が残されている。これからはロケ地を誘致するだけでなく、企画段階から制作スタッフ同士の交流を積極的にしていきたい。なぜなら、スタッフの背景には国柄や文化・歴史があるため、ロケの時だけ一緒ということでは双方の利害が一致しないからだ。話し合う場を設けて、共同企画組織のようなものが作れないかと考えている。

 2008年、秋田県が韓国ドラマ「アイリス」のロケ地になって話題を呼んだが、韓国との国際定期便の減少を食い止めるため、県としてドラマのロケを誘致したという経緯があった。そして2010年、「アテナ:戦争の女神」という「アイリス」のスピンオフドラマのロケ地に鳥取県が選ばれた。ドラマ誘致に至ったいちばんの要因は、秋田県の存在だった。

 鳥取県でも、米子・ソウル間の国際定期便が運休になるという話があった。県として、その定期便を継続するためにインバウンドを一生懸命やろうと動き出したのが3年前である。鳥取県は日本の自治体では最も小さい規模だが、国際交流には盛んに取り組んでいる。国際交流員という名で韓国の青年を県の職員として迎え入れることも行っており、韓国とのつながりは強い。そのような努力で人脈が広がり、このドラマの話をいち早くキャッチして誘致活動を行ったのである。鳥取県としてはスケールの大きな話で戸惑いもあったが、そこで浮かんだのが秋田県の「アイリス」の例だった。まさに同じ境遇にあった秋田県の成功例は、誘致を決断する勇気を与えてくれた。「アイリス」の効果によるデータをもとに試算し、コンセンサスを取っていくことができた。

宮島秀司:

 「アテナ:戦争の女神」には、大変人気のある俳優のチョン・ウソンがキャスティングされており、相当な宣伝効果が期待できる。撮影開始当初は日本でのオンエアが決まっていなかったため、アピールできなかったという事情はあるが、効果的に宣伝を行えば良い形でオンエアまでつながるのではないだろうか。例えば、彼に参加してもらって撮影の最終日などに鳥取県でファンミーティングを行うのはどうだろうか。ロケ地である鳥取県が全面的に協力するという前提で、最初にプロデューサーや制作会社に了解を取っておけば可能だろう。そうしてファンを全国から呼ぶ形を取れば、マスコミも動くはずだ。

 また、影響力のある人物が日本の良さを語るのは効果的である。今回のキーマンはチョン・ウソンなので、彼に日本について語ってもらえるように制作会社やプロデューサーからフォローしてもらうべきだ。人との交流を大切にして、「また来たい」と思ってもらえる環境を作ることが、国際化の第一歩にもつながっていくだろうと考えている。

3.鳥取県の韓国ドラマロケ誘致から見えてきたこと

細羽 正:

 「アテナ:戦争の女神」のロケの話を進める中で、観光地だけではなく、地元にある逸話や神話などのストーリーも紹介した。プレゼンテーションは鳥取県知事自らが行い、各地域については各市町村の長がそれぞれの地域の魅力をアピールした。これには制作側の代表者も共鳴してくれてロケ地が増大し、最終的には30か所程にまでなった。

 撮影の受け入れを実際に行って分かったのは、韓国の仕事は日本とはかなり違うということだった。宿や車両の手配、通訳などの手伝いをしたが、直前で韓国側のスタッフの人数が大幅に増え、予定が全部崩れてしまった。また、昼夜を問わず24時間フル回転で撮影するというスタイルは日本では考えられないことであり、今回は良い経験になった。

 秋田県では「アイリス2」の企画があるようだ。製作側、それから主演であるイ・ビョンホンをはじめとする俳優サイドから見ても、「秋田はいいところだ」という声が出ているそうだ。鳥取県の場合も「いい」といってもらえることが、次の機会につながるかどうかを決めるポイントになるだろう。今回のロケ地受け入れに当たっては、県だけでなく、民間の企業やボランティアにもいろいろな形で応援してもらったので、韓国スタッフにも良い印象を持ってもらったはずである。現時点で彼らの評価はまだ確認できていないが、次につながるチャンスは十分あるのではないかと考えている。

 鳥取県としては、骨格になるコンテンツの著作権、利用の権利などについて、製作側と相談している。また、ロケを進めるために各市町村やさまざまな企業、団体に協力してもらっているが、彼らに関わる権利問題は県が間に立って個別に製作側と交渉した。ロケ支援をする見返りとして、いろいろな権利を得ることは重要なポイントであり、ほかの地域でも取り組んでほしい。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 会議室1A-C(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/26(火) 17:00 - 18:30
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン