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イベントレポート:テレビフォーマット販売 世界の最新事情と日本
概説
 番組が国境を越えて羽ばたくフォーマット販売は、ますます活発になっている。この状況で、海外への展開を模索する日本の放送業界は何を学ぶべきなのか。数々のフォーマット販売を成功させてきた世界最大の番組制作会社フリーマントルメディアの日本代表である石山辰吾氏が、日本の現状と、世界に通用するフォーマットの作り方について語った。
内容

登壇者

石山辰吾/Shingo Ishiyama

フリーマントルメディアジャパン 代表取締役社長

1.日本のテレビフォーマットの現状と将来性

 日本のテレビ番組は、世界に出せるフォーマットがそれほど多くないのだが、なかには成功したものがある。例を挙げると、「しあわせ家族計画」や「マネーの虎」などいくつかあるが、フジテレビの「とんねるずのみなさんのおかげでした」のコーナーから出てきた「Hole in the Wall」が展開している国の数でいうと圧倒的だ。 2010年9月から中国中央電視台のCCTVで「Hole in the Wall」の放送が始まり、中国の全テレビの同時間帯最高視聴率を記録している。中央政府とつながりの強い中国中央電視台のメインチャンネルが日本のバラエティ番組のフォーマットを正式に買い、それが高い視聴率を挙げているということは、ビジネス的にも文化的にも興味深いところだ。「Hole in the Wall」の放送国数は3年間で40か国に広がったが、それに追いつくものはその後、出ていない。

 視聴率を取るために入れられるものは全部入れてしまうのが、日本の番組の構造である。純粋なお笑い番組や情報番組はあまりなく、お笑い番組だが情報性もあるなど、ジャンルの融合が起きている。また、企画が当たるとずっと同じフォーマットを使ってローテーションしていくことは、世界的にはあまり見られないパターンだ。さらに、視聴率を少しでも取ろうとするための努力ではあるが、音を消していても意味が分かるように画面にテロップを出すことは解説過剰ともいえるだろう。今の日本は、皆が同じ情報を共有しているという多様性に欠けた社会だ。視聴者は了解しているという前提で、物事が進んでいく。ポイント、ポイントでは面白いが、構造としてはゆるく、特殊なものになっている。

2.番組開発はフォーマットが重要

 フォーマットを開発する時に最も重要なことは、番組に対する視聴者の視聴習慣である。そのために、まずは出演者のキャラクターを育て、そのキャラクターに対する視聴者の共感を積み重ねていき、最終回で最高視聴率が出るようにすることだ。これがテレビ本来の形だろう。最初は視聴率が悪くても、育っていった番組は継続的に視聴者を引っ張っていく。その後には、シリーズで展開するというテレビの強みも生かすことができる。 また、フォーマットには番組全体を貫くストラクチャーも重要である。ストラクチャーとは中身を入れていくためのフレームワークで、これがフォーマットの本質である。先にストラクチャーがあり、後から中身が入ってくるものだ。番組の持っているブランドとしてのイメージ、ほかの番組とひと目で区別できるスタイルが必要になってくる。その他の大切なポイントとしては、文化的に中立であることだ。固有の文化から発してはいるものの、ほかの国でもその地域の文化に越境して入っていける普遍性が必要になってくる。

 世界に展開しているものとしてはイギリスのフォーマットがあり、数字上で見ると市場の30%以上を占めている。英語のアドバンテージがあるにしても、イギリスの強さの背景には、制作会社ではなく放送局が開発費を出すためにリスクが軽減されている点がある。 今後、日本が番組開発の際に重要となるのは、とにかくフォーマットを意識することだ。その際、ペーパーフォーマットでは説得力がないため、パイロット版を作らなくてはならない。そのパイロット版が、世界的に展開できる仕組みを持ったスタッフの目に留まることが重要だ。

 加えて、国際版フォーマットの開発者は、最終的に英語でバイブルを書けるようにならなくてはいけない。バイブルとはいわばマニュアルのようなものであり、日本のフォーマットを海外向けにローカライズする際、または逆に海外のフォーマットを買って日本向けにローカライズする際の指針となる。例えば海外向けにフォーマットを開発する時、その国の文化を考慮に入れたり、放送事情に合わせる必要があるわけだが、表現を変えなければならないケースについては、バイブルがあればすぐに理解することができる。ひとくちに海外向けといっても1か国や2か国ではなく、もしかしたら20か国といったようにグローバルに展開する可能性がある。国によってそれぞれ事情は異なるため、開発における成功や失敗の経験値を積んでバイブルは書き換えられ続けることになる。 ただし、今の日本の制作会社や放送局にそういうことができる人間がいない。日本の番組を知ることはもちろん、海外の番組も理解できる人材が不可欠になってくるだろう。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 研究会室4A(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/26(火) 15:00 - 16:30
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン