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イベントレポート:日・中・韓キャスティングフォーラム
概説
 海外進出を目指す日本の芸能プロダクション2社と、中国(香港)、韓国の映画プロデューサーが、それぞれの国における合作映画への意欲や状況、製作方法について語りながら、海外進出への手掛かりを探った。
内容

登壇者

杉本 伸/Shin Sugimoto

株式会社アミューズ 取締役(日本)

鈴木謙一/Kenichi Suzuki

株式会社スターダストプロモーション 取締役(日本)

ソロン・ソー/Solon So

映画監督、プロデューサー、『ベスト・キッド』(2010)など(中国)

ジョナサン・キム/Jonathan H. Kim

プロデューサー、『シルミド』『初雪の恋 ヴァージン・スノー』など KOFIC Producing department 客員教授(韓国)

1.それぞれの国の合作への意欲

杉本 伸:

 アミューズに所属しているアーティストたちの活躍の場を日本にとどめることなく、アジアを含めた世界へ広げていきたいと考えている。しかし、アフレコ技術があるとはいえ、その土地の言語をアーティスト自身が話せない状況で海外の作品に出演させることが、本当に良いことなのかと思うこともある。以前に金城武をマネジメントした経験があるが、彼は多くの言語を話せるということで出演できる作品や活躍の場が広がった。弊社に所属する俳優も、最低限の言語を身に付けていなければならないと感じているようだ。

 アーティストやタレント自身がアジアに活路を見いだしていきたいということであれば、我々マネジメントサイドの人間も一緒に応援できる仕組みを作ればよい。中国や韓国のエンタテインメント業界の人々と一体となり、アジアのコンテンツを世界にアピールしていけばよいのではないだろうか。 中国のテレビ局を回っている時、韓国のドラマが数多くオンエアされている現象を目の当たりにしたことがある。テレビ局に話を聞いたところ、日本のフォーマットは大体12、13話だが、韓国の場合は50数話が通常である上に、安価だといっていた。これは韓国が戦略上、自国のマーケットのみならず、中国を含めたさまざまな国へのコンテンツ供給を前提に物作りをしているからだろう。 昨今、韓国の音楽アーティストが日本市場を賑わせているが、韓国は戦略がきちんと練られたコンテンツを作っており、海外で活躍できるアーティストを育てるシステムがかなり先行しているのではないかと感じている。

鈴木謙一:

 スターダストプロモーションは創立30年を超え、現在ではおよそ500名の俳優やアーティストが所属している。私は、プロダクションのマネージャーを中心に20年程やってきた。

 今後のアジアへの参加意欲に関しては、2010年から台北とソウルに拠点を設け、アジア戦略を積極的に進めている。私たちは、ソウルではスカウトという原始的な方法を行い、新たな人材を獲得しようとしている。また、日本の俳優からも中国や韓国の作品に参加したいというリクエストがある。近年の日本の映画産業はマーケティングが重視され、人気の高いコミックや小説を原作とした映画が増えている。それはそれで魅力的な作品になるし、ヒットにもつながりやすいのだが、日本の俳優たちは非常にかたよっていると感じているのだ。中国や韓国はオリジナルの作品を手掛けており、合作を中心にグローバルで作家性の強い作品も多い。その上、日本によくあるパターンのテレビドラマ作品の映画化ではなく、初めから映画作品が製作されている。そうした作品への参加リクエストが多くの俳優から寄せられている。

ソロン・ソー:

 私は、エンタテインメントビジネスでは約20年の経験がある。もともと香港で仕事をしていたが、今は活動の拠点を中国に置いている。 中国の映画産業は過去2年間でかなりの進化を遂げ、興行成績は前年の2倍に伸びている。規制緩和も進んでおり、海外からの才能、例えば、韓国からも俳優を迎え入れるようになってきた。

 かつて、日本のタレントが香港の作品に登場することがあったが、中国ではこうした事例がなかった。その背景には、政治的な側面も妨げになっていた。現在、中国は韓国から多くのドラマ作品を輸入しているが、映画作品においては中国だけでなく、香港も韓国から輸入している。一方、日本のドラマ作品は香港のみへの輸出となっている。そのため、日本の作品や俳優の認知度は、韓国の俳優に比べると劣っているというのが今の中国の状況だ。

 中国は、ジャッキー・チェンが過去に果たしたように、将来的には中国作品が日本市場に多く受け入れてもらえることを目指して、日本との合作を意欲的な姿勢で進めようとしている。また、キャスティング的には日本の俳優、あるいは韓国の俳優を中国の作品にも登場させるというような動きも出ている。

ジョナサン・キム:

 私は約22年にわたり、主にプロデューサーとして映画業界に身を置いてきた。プロデューサーとして携わった作品には、『9デイズ』『ダブル・ミッション』などのハリウッド映画もある。 韓国作品や俳優はどんどん海外へと進出しているが、その行き先の大半は日本よりも中国だ。しかし、最近は韓国の俳優が日本の作品に登場するようになっており、例えば2010年の『ゴースト もう一度抱きしめたい』などがある。

 韓国のテレビシリーズは中国で人気があり、中国のプロダクションからも俳優を紹介してくれないかというリクエストがきている。しかし、マネジメント会社の規模が小さいため、なかなか対応できないという現状がある。韓国のマネジメント会社は個人経営的な側面が強く、グローバルな事情をあまり周知していない。情報を持っていないので、リクエストをもらっても、それに対応できないのだ。中国や、製作会社の規模が大きくて人材も豊富な日本と比較すると、韓国の規模は非常に小さい。だからこそ我々は、海外の市場へ出ていかなければならないと思っている。

2.国の違いによる俳優への待遇

ソロン・ソー:

 外国人の俳優を映画に出演させる場合は、自分の国籍で演じさせることが大事であり、言葉は障害にならないと思う。例えば、日本人が北京語を話そうとしても母国語でないため、演技がおろそかになる。つまり、母国語で話して、自由に演技をしてもらうようにしている。クオリティの高い映画を作るためには、俳優本来の演技を引き出すことが大前提なのだ。

 現在、上海に学校を作って確立させ、次代を担うタレントを育成したいと考えている。ある教育機関を通じて、演技・アクション・カンフー・ダンスなどを半年間勉強させ、次の年には映画に出演できるようにしたい。この人材育成には、韓国や日本の学生が参加することも考えられるだろうし、香港や台湾からも迎える計画がある。

ジョナサン・キム:

 日本では俳優が映画製作に参加する際、映画につきっきりになることがある。しかし韓国の俳優は、映画の撮影中でもコマーシャルの仕事があれば自由に抜けてしまう。俳優の扱い方にも、韓国と日本では相違点がある。韓国の俳優には仕事中、車を提供しなければならないが、日本ではそんな義務はない。韓国の俳優は非常に良い扱いを受けているので、ほかの国で韓国とは違うやり方に接すると、冷遇されたように感じてしまう。実際に、日本の映画祭やイベントに韓国のタレントが招待された時、彼らは待遇の違いに驚く。

 また、韓国の役者が日本よりギャラが高いのは、製作期間によるものでもある。日本では製作期間が韓国より短く、スケジュールを守るが、韓国では1年、2年を超える場合もあり、1本あたりいくらという計算で支払われる。韓国の映画産業も日本のように体系化して、システムを徹底すべきであろう。

鈴木謙一:

 韓国との共同製作の注意点としては、やはりスケジュールだろう。韓国側はうらやましいくらいの時間をかけて、納得いくまで撮影するが、日本では段取り最優先といった側面がある。お互いに良い作品を作りたいという意識は同じだが、スケジュールに対する考え方の違いが、あらゆる面で問題になることが多いといえる。

 日本のプロダクションは数百社あり、規模はまちまちで、スタイルも確立されていない。海外からオファーの話があるたびに、自分たちのスタンダードがアジアの国ではなかなか理解されていないのだと分かった。今後、何がグローバルスタンダードになっていくのか、ほかの国とのやり取りの回数を重ねることで理解できるようになるのではないだろうか。

3.アジアに必要なキャスティングディレクター制度

ソロン・ソー:

 アジア各国との合作は、ハリウッドよりも実現しやすい。ハリウッドのスタジオからは多くのことを学べるが、あまりにも大きすぎるし、作業が細分化されているのでたくさんの部門があり、それぞれに細かなルールがあって大変だ。しかし、香港との製作では多くの人たちが共同作業を一緒にやっているのでやりやすい。

 アジアで導入したいのは、キャスティングディレクター制度だ。香港や中国では、監督がすべてのキャスティングを決定したり、プロデューサーが自分の映画に友人を出演させたりすることがあるが、作品のクオリティに影響を及ぼす場合もある。しかし、「キャスティングのプロ」を置くことで、作品の質が保てると私は考えている。キャスティングディレクターは作品の世界観や脚本をよく理解し、監督やプロデューサーとの対話を通してベストのキャスティングを行う。そうすれば、その作品が持つ可能性や魅力を最大限に引き出せるはずだ。ただし、その際には、キャスティングディレクターの権限を損なわないようにしたい。

4.オリジナルコンテンツの重要性

ジョナサン・キム:

 日本の俳優を海外で活躍させるためには、まず、日本のコンテンツが海外で人気にならないといけない。それは俳優のレベルというよりも、コンテンツレベルでの工夫が必要だ。

 中国市場において、日本よりも韓国のコンテンツが人気を得ている理由は、コンテンツの作り方に違いがあるからだろう。韓国の映画やテレビシリーズはオリジナルだが、日本作品にはマンガ、テレビシリーズ、小説が原作になっているケースが多い。そうした日本作品を中国に持って行っても原作を知らないので、それほど盛り上がらないのが現状だ。日本市場だけなら、原作に人気があって知名度も高いという付加価値があるが、海外市場ではそれが通用しない。日本映画のシェアは、韓国ではわずか2~3%。支持者はいるが、主に若い人たちであり、日本における大ヒット作品でさえも、韓国ではほとんど認識されていないのが大半だ。

杉本 伸:

 合作という手法は、アジアのいろいろな才能を持つ人々と一緒に仕事をするチャンスが増えるため、大いに素晴らしいことだと考えている。一緒に仕事をする上で、言語はかなり重要である。仲間たちとの親睦を深めたいし、共に物作りをしていく際には、会話による意思の疎通を図らなければならない。母国語以外でコミュニケーションをとることはなかなか難しいが、お互いの言語と文化を認め合いながらひとつの作品を作っていくことはあらゆる面で魅力的だし、国ではなく、アジアという地域文化を形にして共に世界へ進出していくことは、非常に喜ばしいことだ。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 会議室1A-C(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/26(火) 14:00 - 15:30
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン