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イベントレポート:映像制作者のための海外放送形態事情
概説
 日本の番組フォーマットは海外と異なっており、日本のコンテンツが海外進出を考える際に、その公開・放映形態の違いがネックとなる場合もある。企画段階から海外進出を視野に入れた製作を促進するため、アジアのコンテンツに詳しいふたりの識者が、中国や韓国における日本のドラマの現状と今後のコンテンツのあり方について語った。
内容

登壇者

小野原和宏/Kazuhiro Onohara

共同テレビジョン 映像制作室 室長

中澤義晴/Yoshiharu Nakazawa

日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外市場開拓部

1.日本のドラマは中国でどう見られているか

小野原和宏:

 私はフジテレビと共同テレビジョンにおいて、ドラマの演出を25年ほどやってきた。現在は共同テレビジョンの技術センターで映像制作室を立ち上げ、番組をひとりで作る方法、カメラマンディレクターシステムを作っている。 中国で正式に番組販売しようと考えた時に、多数の海賊版DVDが出回っているという問題がある。テレビ局と契約したにもかかわらず、海賊版が出てくる。ただ製作側から考えれば、ある意味で宣伝になっているところもある。

 その後、正式にDVDを発売すると売れ行きが良い場合があるのは、海賊版で出回った一部を見た人が、今度は良い状態で作品を見たいと思うからではないだろうか。海賊版が出回ってしまったのを大げさに非難することが、アジアにおいて必要かどうかは難しいところである。

中澤義晴:

 ジェトロでは、中国における日本コンテンツの放映状況データを、四半期ごとに現地事務所で確認している。中国で輸入が許可された日本のドラマは、2008年では7本、2009年は5本程で、「曲がり角の彼女」「ハケンの品格」「絶対彼氏」などがある。許可が切れた「東京ラブストーリー」や「ロングバケーション」などは、輸入許可を再度申請している。それは、中国の人々にとって、1990年代のドラマの方が面白かったという評価があるからだ。現在、中国は高度成長期でバブル的なところがあるため、1990年代のドラマの方が分かりやすいという話を上海在任時によく聞いた。「ハケンの品格」などは、中国ではほとんどが男女共働きという社会状況もあって輸入しようということになったのだろう。新規、あるいは過去に許可を取った日本のドラマが何本か放送されているが、ゴールンデンタイムに外国ドラマは流せないという規制もあって、日本の作品が常に見られているという状況ではない。

 中国で映画および映像コンテンツを見る層は大体16歳から40歳くらいで、この層に対して支持を得られるものを求めたいと、中国は常に言っている。特に、お金を払って見るコンテンツについてはそうであるようだ。一方、無償で見られるコンテンツに関しては、経済成長を時代背景にしたドラマの人気が高い。中国では「宮廷女官チャングムの誓い」の方が「冬のソナタ」よりも人気があった。「宮廷女官チャングムの誓い」は湖南省のテレビ局が力を入れており、全国で見られる湖南省の衛星チャンネルもあったために大ヒットした。中国にはキー局のようなシステムが各省のもとにたくさんあり、すべての局のチャンネルを合わせると、恐らく数千のチャンネルがあるだろう。

2.日本のコンテンツは海外では通用しないものが多い

小野原和宏:

 韓国の市場は、日本と比べると7分の1程度の規模なので、ドラマ製作においては基本的に海外でも売れるものを作るという考え方がある。ところが、日本はドラマにしても映画にしても、「日本人向けにどう作るのか」を重視しており、日本にいる外国人さえも意識していない。そのため、海外販売しようとした時に、日本のものはニーズに合わないということをよく言われる。意識を変えて、マーケットをもっとアジアへ広げていく必要があるのではないだろうか。

 また、海外への販売方法に関しても問題がある。日本は海外に対して「気に入った作品があれば選んでください」とセールスするだけだが、韓国は1本1本の作品を宣伝し、作品のひとつひとつに制作者の熱いメッセージが添えられる。この方法は購買意欲をかきたてると思うし、日本もそうした点をもっと考えてセールスすべきではないだろうか。

 日本の場合、テレビ枠自体が高価なことから、経済不況になってくると途端にスポンサーがいなくなってしまう。民間放送の場合は特に、スポンサーに左右される。また、スポンサーという仕組みがあるために00分ちょうどから始まるのは日本だけで、海外では00分からは始まらない。番組表を見ると00分から始まっているはずなのに、いくら待っても始まらないことが多い。

 日本のコンテンツが海外からの支持をあまり得られないのは、日本のドラマがCMを最大限に生かした脚本作りがされているから、という理由もあるだろう。日本では、2時間ドラマも含め、脚本を作る際にCMがいくつ入るか分かった上で作るため、つなぎをCMで飛ばすことができる。話の流れを断ち切る時にCMを利用することもある。一方、韓国や台湾はフレキシブルに作っており、特にコンテンツを重視する韓国では、ドラマの間にCMを入れない。

 CMの入ったドラマのDVD化の作業は大変で、CMに黒落ちを入れてクール分けをするが、海外では慣れていないために驚くであろう。演出でフェードアウトしていくのは普通だが、それとは違うし、海外ドラマは連続でつないでいくので違和感があるのではないだろうか。NHKの作品が見やすいというのは、CMが挟まれないためにドラマが途切れないから、DVD化されても違和感がないということが理由と考えられる。

中澤義晴:

 最近、ジェトロのタイ事務所のスタッフから言われて危機感を持っていることがある。それは、韓国のコンテンツのことだ。特にドラマが攻勢をかけて来ており、日本のコンテンツの存在感が下がっているという。タイに住んでいる者はその勢いを身近に感じているので、何らかの手を打てと日本に言ってくる。タイは親日的であるというイメージを持っているが、こと映像製作においては、安心感を持っていてはいけないと感じた。

3.中国への番組販売の手法

小野原和宏:

 今、制作者が考えているのは、日本の番組をYouTubeで流すとどういう効果があるのかということだ。日本の番組が台湾や中国での放送が決まった時に、YouTubeで一度見た作品であれば、視聴率が上がる可能性があるわけだ。全く知らないものより、インターネットで見たことがある番組の方が、次はきちんとテレビで見たいという人には効果的かもしれない。YouTubeで流すということはコンテンツの流出でもあるため、ビジネス権の損失とも捉えられがちだが、最終的にはプラスになる可能性を持っている。

 中国での番組販売は、担当者の好みで判断されるケースが多い。担当者が気に入らないと、売るのは難しくなる。制作者側からすれば、より多くの声を反映させて買ってもらった方が公平である。11話あるうちの2話まではインターネットで流し、反応を見て、アクセス数が高いから買ってもらうというやり方も有効なのではないだろうか。

4.攻めるための権利を行使する

小野原和宏:

 日本における「権利」の考え方は作品を守るためのものであって、攻めるために行使するという意味が含まれていない。恐らく日本側は、アジアと一緒に企画を進めると、著作権などを勝手に決められてしまうのではないかと心配するのではないだろうか。しかし、権利は攻めるためにあるわけで、海外マーケットを考えない権利は必要ない。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 研究会室4F(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/26(火) 10:30 - 12:00
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン