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イベントレポート:中国・香港─その映画ビジネス戦略
概説
 香港の映画会社Orange Sky Golden HarvestのCOOであるケルヴィン・ウー氏と、「Variety」の北京在住契約記者であるクリフォード・クーナン氏が、変化の著しい中国映画ビジネスや香港映画の役割などについて議論した。
内容

登壇者

ケルヴィン・ウー/Kelvin Wu

Orange Sky Golden Harvest Entertainment Holdings Limited COO

クリフォード・クーナン/Clifford Coonan

「Variety」 中国在住記者

1.変化が著しい中国の映画ビジネス

ケルヴィン・ウー:

 Orange Sky Golden Harvestは中国に52のスクリーンを持っており、2010年末までに200のスクリーンを出したいと考えている。そして、2011年の春までには250のスクリーンを目標としている。中国よりはスピードが遅いが、香港、台湾、シンガポールには、毎年新しい映画館を出すように尽力している。

 中国の映画館は、大体ショッピングモールの中にある。ショッピングモールの規模はかなり大きく、新開発された土地もあれば、再開発する地域もある。30万~40万人規模の都市では、5万平方メートルを超えるショッピングモールも少なくない。また、100万人規模の大きな都市も200程あり、なかには映画館が全くない都市も存在するため、今後、開発の大きなチャンスがあるといえるだろう。

 中国は衣食住のほかに、医療やエンタテインメントなどの商品アップグレードが進んでおり、映画もそのひとつである。中国ではもともと自宅で海賊版のDVDを見たり、ダウンロードしていたりしていた。その経験がアップグレードして、現代的でモダンな映画館で映画を見ることは、中国の将来の消費のあり様ともいえる。

 中国人に喜ばれるコンテンツとしては、やはりハリウッド映画がいちばんだ。傾向としては、中国本土で作った香港の監督作品や、中国で人気がある監督の新作がよく見られている。今は、香港の監督も年に10作以上を提供し、コメディも作られ、中国のマーケットで売られている。 映画ビジネスについては、中国には大手の製作会社がまだ少ないので、最初から共同製作の形で入っていく方が楽かもしれない。私からの提案としては、香港を通じて中国と共同製作を行うのが最も良いということである。

 共同製作は大きく2種類に分けられる。ひとつは中国語の共同製作、もうひとつは英語、つまり、ハリウッド映画の共同製作である。ハリウッド映画の共同製作は予算がかなり大きく、もちろんそれを回収する必要がある。中国との共同製作の条件は、撮影の約3分の1を中国で行わなければならない。ただ、中国政府は税制控除などをあまり行っておらず、魅力的ではない。

 日本との共同製作について考えると、例えばオレンジスカイ・ゴールデン・ハーベストが配給した『DEATH NOTE』を中国語でリメイクしたら、大ヒットするのではないだろうか。原作だけを譲るのではなく、ライツのマーケットがどこにあるかは、言語、場所で決まるだろう。

クリフォード・クーナン:

 近年では、香港と中国本土を切り離すことは不可能である。香港は東アジアにとって、また中国にとっても重要な地域だ。人材、専門性、そして創造性などといったものは、香港発が多い。映画事業においても、香港は長年にわたって確立されている。

 中国は興味深く、大きな可能性を秘めているが、状況は複雑だ。中国の映画市場は既に10億ドル以上であり、5年以内には映画市場として世界で2番目の規模になると言われている。スクリーンの数は2015年までに、現在の12,000から3倍の数になるようだ。また、ショッピングモールも多数建設され、そこには必ず映画館が作られる。これまで、中国の人々はイベントとして映画を見に行く習慣はなかったが、今はデートなどにも使われている。大規模な開発のために、人々が映画を観賞する方法も変わってきているのだ。

 中国で公開される外国映画に関しては年に20作品という制限が設けられているため、国内のコンテンツにかなり力が注がれている。中国はいわゆる黎明期であり、これから先、更に拡張することだろう。

2.中国における香港映画の適応性

ケルヴィン・ウー:

 香港と中国で結ばれた「Mainland and Hong Kong Closer Economic Partnership Arrangement(CEPA:中国本土・香港経済連携緊密化取決め)」は、興行と配給に役立っている。外国の会社は、中国では配給ができない。しかし、香港の会社なら免許は取れる。その条件は、配給なら配給、興行なら興行の仕事を3年以上やった会社ということである。

 資金の問題も重要で、中国にも余っているお金を映画に投資したいという投資家はいる。近い将来、映画への投資ビジネスは大きくなると予想される。香港が資金調達のシステムを提供して中国の投資家に教えれば、もっと良くなるだろう。

クリフォード・クーナン:

 中国と香港の共同製作による映画の本数が増えている。CEPAによって、香港の人は中国での仕事がやりやすくなり、映画の内容も変わってきている。更に面白いのは、映画の言語にも影響を与えていることである。香港では従来、広東語で映画が作られていたが、今は北京語になっている。香港の監督たちは言語の変化にも適応しており、香港映画そのものにも復活が見られる。

 香港の役割は、一種のまとめ役のようなものである。多くの企業がピーター・チャン監督やオレンジスカイ・ゴールデン・ハーベストと組んだりしている。ピーター・チャン監督は雲南地方のへき地で、格闘系の大作の撮影を行っている。彼は香港出身だが、中国市場にうまく適応し成功している。『ボディーガード・アンド・アサシンズ』は大作であり、『ウォーロード/男たちの誓い』も大ヒットした。香港のアイデンティティを保ちながら、中国本土で仕事をしている。

 だが、懸念もある。香港映画には警察をテーマとした拳銃を向け合うような作品が多く見られるが、中国では検閲があるため、そういった作品は難しい。中国政府によると、警察は善人として扱わなければならない。警察が善人なら、今の香港映画は半分に減ってしまうだろう。そのため、香港の映画は変化しており、歴史ものやSFに集中している。映画作家は、中国の検閲を何とか回避する方法を模索しているが、現状では検閲が少なくなっているとはいえない。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
政策研究大学院大学 会議室1A-C(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/26(火) 10:30 - 12:00
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン