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イベントレポート:ジェレミー・トーマスが語るアジアとの共同製作とは?
概説
 オープニング記念のスペシャルトークセッションとして「ジェレミー・トーマスが語るアジアとの共同製作とは?」が行われた。 プロデューサーとして、古くは『戦場のメリークリスマス』や『ラストエンペラー』、最近では『十三人の刺客』など、数多くの映画製作に携わってきたジェレミー・トーマス氏が、自身の映画に対する思いやアジア各国との共同製作について語った。
内容

登壇者

ジェレミー・トーマス/Jeremy Thomas

プロデューサー、『戦場のメリークリスマス』『ラストエンペラー』『十三人の刺客』など

1.大島渚監督との出会い

 私の父親も映画監督であり、50本の映画を撮った。私自身も幼い頃からナショナル・フィルム・シアターなどに通っていたため、映画の影響を大いに受けて育った。 そんな私が大島 渚監督を知ったのは、ロンドンの映画館だった。そこでは黒澤 明監督や溝口健二監督の映画も上映されていた。大島監督の映画は、私にとって非常に過激なものだった。なぜなら、ほかの映画作家で大島監督のような題材を取り上げている人物はいなかったからである。

 初めて大島監督本人に会ったのは、カンヌ映画祭で『愛の亡霊』が監督賞を受賞した時だ。偶然にも私は彼の隣に座っていたため、名刺を渡すことができた。それから数年後、彼から私のもとに200ページもの脚本が送られてきた。それが『戦場のメリークリスマス』だ。日本の捕虜収容所で、ある男が捕虜の男を愛するという異色の話だが、変わったストーリーの映画を作る機会をとうとう与えられたのだと解釈した。この作品の資金調達は、本当の意味での合作であり、半分ずつ負担し合う形となった。そして、カンヌ映画祭でユニバーサルに売り込むことができた。 『戦場のメリークリスマス』で出会った人たちとは、その後、北野 武監督の『BROTHER』で再びつながることになった。30年前にコンタクトした人々と今でも関係が続いているのは、経験で得たものは宝であり、活用しなければならないと思っているからである。

 ビジネスでも気に入った人物をより理解し、一緒に仕事ができるようにしておくべきだ。よく知り合えば結果、良い仕事につながる。映画作りはさまざまな困難を伴うので、相手の能力を理解していれば物事を進めやすくなる。

2.『ラストエンペラー』との出会い

 アジアとの共同製作の中で最も大きな仕事は、ベルナルド・ベルトルッチ監督との『ラストエンペラー』だろう。ベルトルッチ監督は私より10歳年上だが、出身校が同じという縁である。私はベルトルッチ監督と仕事がしたかったので自ら連絡を取り、ロンドンのチャイナタウンにある事務所まで来てもらえることになった。そして、『ラストエンペラー』の製作を手伝いたいと申し出たのだ。しかし、当時の私は30代半ばと若く、脚本を読んだ時にこれは不可能かもしれないと思ったこともあった。

 中国へ行き、最終的にはさまざまな許可を得て戻ることができた。『ラストエンペラー』は最終的に一般市民になる皇帝・溥儀の話だが、中国政府からはぜひとも中国へ来て製作してほしいと言われた。そして、中国政府が全面協力の上、紫禁城での撮影権利も得た。この作品は、莫大な製作費がかかっている。ふり返ってみると、自分でもよく資金を集めたものだと思うが、その頃の中国は文化的に開放へ向かっていたため、この作品を非常に欲していたのだろう。

 実際の撮影には5か国の人間が関わっており、文化的なやりとりも必要だったため、かなりの困難が伴った。舞台が満州ということで日本との絡みもあり、日本の俳優や衣装なども取り入れた。イタリア、イギリス、中国などのいろいろな文化とも交流しながら撮影されたのである。

 『ラストエンペラー』の興行成績は大成功だった。アカデミー賞もノミネートされた9本すべてを受賞。ベルトルッチ監督は監督賞を受賞し、彼のキャリアの大きな転機となった。

3.文化を理解することから共同製作は始まる

 映画の資金はベンチャー的な要素があり、絵画や書物を書き上げることとは全く異なる。あらゆるデータと経験を総動員して、作品を作り上げることが重要だ。共同製作に関しての資金調達は1か所ではなく、いくつかの調達先が存在する。

 現在、私はカナダ人監督と共同製作を行っているが、カナダの制度を採用している。ドイツをテーマにしているので、ドイツのシステムも使っている。つまり、ふたつのシステムを活用しているわけだ。ヨーロッパでは多くの国との合作合意がある。日本も他国とそのような合意を結ぶべきだ。韓国あるいは中国、フランスやイタリアなどと、合作協定が必要だろう。そうすればより良いシステムが立ち上がり、機能するのではないか。そのためには、政府が取り組みを進めて欲しい。政府関係者には、文化は人生の一部だと理解してもらいたい。ビジュアルなストーリーテリングはコミュニケーションのひとつの手段であり、国家間の政治問題などを解決する術にもなるのではないか。映画は国際的な言語である。だからこそ、共同製作には意味があると思う。

 1999年に公開された『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は、低予算で素晴らしいアイデアを実現させた。デジタル時代に育った人々は、どう撮影し、どう編集すれば、従来とは違った映画にできるかを知っている。昔は、照明なしに森へ入ってデジタルカメラを使うだけでは映画を作れなかったが、今は新たなテクノロジーが生まれ、それを活用することが可能になった。その分、かつて求められたスキルと現在のスキルでは異なってきているのだろう。スキルはテクノロジーに追いつかなければいけないというのが今の時代だ。

 私は主流派の作品には関心がない。もちろん、スタジオは超大作を作る能力を持っているし、日本においてもそういうスタジオはあるだろう。しかし、意欲的な独立系のシネマをもっと外部に紹介すべきである。世界もアジアがどのような作品を作り上げることができるのか、関心を寄せるべきだ。クオリティが高いものは、経済的にも文化的にも訴える要素がある。そうした作品をどんどん外に出していくべきだし、言語的なバリアがあっても乗り越えられるだろう。

基本情報
事業名
UNIJAPAN Entertainment Forum
会場
六本木ヒルズ森タワー アカデミーヒルズ49階 オーディトリアム(東京都港区六本木)
開催日
2010/10/25(月) 17:30 - 19:00
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン