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イベントレポート:ハリウッド流脚本開発トレーニング
概説
ハリウッド映画『きみがぼくを見つけた日』や『そんな彼なら捨てちゃえば?』のエグゼクティブプロデューサーをはじめ、様々なジャンルの映画製作に関わり、米国フィルムスクールUCLAの客員助教授でもあるMichele Weiss氏を講師に迎え、ストーリーテリングの基本である三幕構成や分析報告書(カバレッジ)作成に関するレクチャー、実際の映画製作過程の解説、脚本を読んでスクリプト・ノーツやログラインを作成するグループワークなどを実施した。
内容

講師 ミシェル・ワイス/Michele Weiss Cue the Dog Productions 共同創業者 ---

1.「脚本分析」のスキルがなぜ必要か

ハリウッドの映画スタジオにおいて、開発担当のエグゼクティブとして最大の仕事は「脚本開発」であり、それを遂行する上で「脚本分析」は最も重要なスキルとなる。ハリウッドのように、多様な経歴を持つ人が集まって協働する場において、脚本分析のスキルは共通言語となる。経験的に、ハリウッドで成功している多くの人はこのスキルが非常に高く、また、どのような立場で仕事をしていようと、共通に求められる最も基本的なスキルが「脚本分析」である。


2.「三幕構成」について

三幕構成(Three acts)とは、物語や脚本を以下の三幕に分けて執筆したり、分析したりすることを指す。

  • 第一幕(Act 1):状況設定(Setup)
  • 第二幕(Act 2):葛藤など(Conflict)
  • 第三幕(Act 3):クライマックス及び解決(Climax、Resolution)

三幕構成は、多くの成功した映画の共通点を研究した結果として導き出された考え方であり、すべての脚本が必ずしもこの形式に沿っている必要はないが、良い映画はなんらかの形でこの構成に則していることが多い。構成ばかり見ているとその作品の最も大切な魅力を見逃すのではないかという懸念を示す人もいるが、最終的に脚本では「構成」が重要な役割を持つので、この分析手法は非常に有効といえる。 この三幕構成の考え方を理解すると、脚本分析を行う上で非常に役立ち、特に物語のどこかがうまく作用していない脚本を修正する際に、具体的な問題点を見つけやすくなるとともに、改善案を提示しやすくなる。また、脚本選択を行うときや脚本家とともに脚本開発を行うときはもちろん、撮影中に発生する突発的な修正においても、この手法を知っていると冷静に対処することができる。ハリウッドで仕事を得る際にも、脚本分析が課題として出されることが多く、業務に取り組む上でも、脚本分析の用語を理解し、使用できることが求められる。


3.分析報告書 / カバレッジ(Coverage)について

数多くの脚本の中から優れた企画を見つけるためには、分析報告書(カバレッジ)から判断していくことが一般的である。また、脚本を読んでカバレッジを作成するスクリプト・リーダーという仕事は、映画業界でキャリアをスタートするにあたって最初に行なう基本的な仕事のひとつでもある。カバレッジを数多く書くことで脚本分析の能力も高まり、良い企画を見つけ出すことができるようになる。


4.ハリウッド映画スタジオにおける脚本開発について

脚本開発におけるスタジオ・エグゼクティブの役割は、スタジオが映画製作をするという前提で、脚本用の素材を検討し、購入を決定するところから始まる。ハリウッドでは映画用の脚本が無数にあるため、少人数のバイヤーに対して数多くのセラーが存在している。また、脚本開発の主要なプロセスについては以下のとおりである。

  1. 脚本素材(原作小説、脚本、コミック等)を選ぶ
  2. 脚本家を雇う(脚本家と脚本素材のマッチングを行う)
  3. 脚本家と共に脚本を完成させる
  4. 作品にマッチした監督を雇う

5.実際の映画製作過程について

講師の代表作である『そんな彼なら捨てちゃえば(He's Just Not That into You)』は、人気テレビシリーズ『セックス&ザ・シティ』の脚本家2人が手掛けたベストセラー原作の映画化作品であり、映画化権購入から3年で製作した。これはハリウッドにおいては比較的早い進行のプロジェクトである。 脚本開発にあたっては、書簡形式の原作をいかに映画の脚本に起こすかが課題であった。初期脚本の完成後に、まず脚本家によるピッチを行い、はじめにログラインを発表したうえで、全体を通してのストーリーラインを説明した。また、監督候補によるピッチでは、初期脚本どの部分を生かし、どの部分を変更しようとしているのかということと、どのようなルック(雰囲気)の映画を考えているのかということを中心に説明した。 最終的に、スタジオ側のラインナップの特色などとのバランスも含めて検討したうえで監督を決定したが、本作の監督に決定したケン・クワピス(Ken Kwapis)は、TVのコメディドラマを作っており、映画でも『旅するジーンズと16歳の夏(Sisterhood of the Traveling Pants)』で比較的無名の俳優を起用し、複数の女性たちを描いた作品として成功を収めた実績を持っていた。 キャスティングに際しては、ジャンル、観客ターゲット層、原作映画化権の購入金額、目標の興業収入などを考慮しながら検討を行った。また、キャスティング・フィーは予算(コスト)と直結するため、P / L(Profit and Loss:損益計算書)上で試算を行いながら決定する。 こうしてキャスティングが決まると撮影が開始される。一般的には、ハリウッド映画は税制優遇などがある他の州で撮影するケースが多いが、本作には大物俳優が多数出演しており、スケジュールもタイトだったため、ほとんどの撮影をLAで行った。 撮影終了後、監督には10週間かけて編集を行う権利があり、その期間中はスタジオからは意見することができない。これは全米監督協会とスタジオとの間の労使間協定により定められたルールである。本作では、最初のディレクターズ・カット版が2時間半だったため、尺を少しだけ短くするように依頼し、10分だけ短縮したバージョン(音楽やカラー調整が未完成のラフ版)でテスト・スクリーニングを実施した。テスト・スクリーニングの結果は、試写を実施した夜には調査会社からマーケティング部に渡り、マーケティング部で集計されて製作チームにフィードバックされる。最終的に映画が完成するまで、段階的にテスト・スクリーニングを行うため、この指標は映画のポストプロダクションが正しい方向性に進んでいるかどうかを判断する材料となる。また、観客と一緒に試写を見ることで、スコアの数値以外にも、実際に映画がどのように受け入れられているかという反応を得ることができる。 こうしたテストを行いながら映画の編集が終了すると、最終的なMA、カラー調整等を行い、俳優たちにも試写をして、彼らのフィードバックに対して可能な範囲で修正を行う。なぜなら、俳優たちにもプロモーションに協力してもらう必要があるためである。 その後はマーケティング部が引き継ぎ、さまざまなマーケティングツールを利用したターゲット層に向けた細かな広告展開など、マーケティングやプロモーション・プランを考えて展開し、映画公開に備えることになる。

基本情報
会場
丸ビルホール&コンファレンススクエアRoom 5(千代田区丸の内)
開催日
2013/3/9 - 10
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン