インフォメーション

ケーススタディ:日本映画のイギリスでの配給
概説
 「日本映画のイギリスでの配給」のケーススタディとして、ロンドンベースの配給会社Soda Picturesの設立者のひとりであり、取締役のエヴァ・ギャブロウ氏が、映画『ノルウェイの森』の脚本との出会いからイギリスでの配給までの道のりを語った。
内容

登壇者

エヴァ・ギャブロウ/Eve Gabereau

Soda Pictures 取締役

1.『ノルウェイの森』を公開するまで

 『ノルウェイの森』はプリセールスではなく、伝統的なルートのフォルテシモ・フィルム・セールスを通じて購入した作品である。村上春樹原作、トラン・アン・ユン監督、ビートルズの曲と、興味を持つには十分な内容だった。

 まず2009年5月に脚本を読み、興味を持った。その1年後、カンヌでプロモーションリールを見たが、その時点ではまだ、ビートルズの曲のライセンス許可が完全に下りていなかったので、ポストプロダクションにかなりの時間が掛かると思ったが、当社として最初のオファーを出した。しかしその時は、プロデューサー側から断られた。恐らく、他社からもいくつかオファーを受けており、その中から良い条件を吟味していたからだろう。

 ヴェネツィア国際映画祭で再び見たが、改めてこの作品を気に入った。しかし、商業性を考えると、提示しているオファーよりも高くは払えないと思った。なぜなら、日本映画のマイナスな特徴でもある、つかみがはっきりしていない内容が変わっていなかったからだ。ヒットする可能性はあったが、ブレイクするまでは難しいと感じた。結果的にはオファーを変更せず、マーケットプランを提案した。

 1週間後にBBCとチャンネル4から興味があるという話が出たので、もし興行的に成功すれば、プラスボーナスとして更なる金額を出すとアプローチした。 その後、興行が決まった2010年の秋からプレビュー上映を行い、プレスへの対応も含め、実際に動き出した。11月から日本で行ったプレミアの様子を見ながら、イギリスでの公開戦略を決めていった。インディペンデント系の映画はDVD発売に関して縛られることはないが、この作品はシネコンにかけるので、DVDの発売は最低でも16週間後という制約があった。

 配給協力するにあたり、フィルムカウンシルに、この映画はスペシャライズフィルムだと提案した。スペシャライズフィルムとは、アートフィルムやワールドシネマといったビジネス上での否定的な呼び名を避けるための言葉である。時間が掛かったものの、結果的には認められたため、マーケットのサポートによって全体の予算が約2倍になった。

 アイルランドを含めたイギリスでは、プリント数が40本、250スクリーン程度の上映規模になる。日本だと低い額だが、3,000万円の宣伝費で50万ユーロの興行成績をターゲットとして設定している。ただし、配給率の場合はその3分の1しか手元に残らないため、いろいろと予測を立てているが、当座はこの程度の興行成績になるだろう。『瞳の奥の秘密』『ゲンスブールと女たち』などと同じくらいの興行成績が見込めるのではないか。興行成績が良い作品のすべてが高いDVDセールスを見込めるわけではないが、『ノルウェイの森』は原作も人気なので、原作本を持っている人はDVDも購入するだろうという予測を立てた。

2.プレビュー上映での観客の反応

 観客のターゲットは、村上春樹ファン、原作のファン、イギリス在住の日本人、学生、それからファッションに興味がある人たちであり、誰からも好まれる作品ではないと考えている。

 プレビュー上映のマーケットのリサーチは、観客の反応を見るのに有効だ。今回は男女半々の割合で観客を入れてリサーチを行ったが、結果を見ると観客の約3割しか原作を読んでいなかった。だがこれは実際のマーケットの反応ではなく、プレビューによく行く人々の反応であるし、ターゲット層ではない、いわゆる一般客の認識である。つまり実際に公開されれば、見に行く観客のほとんどが原作を読んでいるのではないかと思われる。

 プレビュー評価では、約8割が「ベリーグッド」もしくは「エクセレント」という結果だった。また、同じく8割程が「友達に推薦する」ということだった。否定的な意見としては、「分かりづらい」「長すぎる」というものがあった。 日本での主要なアートワークは「雪」のイメージだが、イギリスでは春に公開されるため、変える必要がある。イギリスのポスターはほとんどが横長なので、どちらにしてもデザインを変えなくてはならない。予告編についても、同じように考えている。

 原作本はイギリスでも既に発売中であり、サントラ盤も店頭に並んでいる。ユニクロとのタイアップもあり、これからもさまざまな提携が考えられるが、とにかく固定のイメージを観客に植え付けるという目標で、『ノルウェイの森』の今後の展開を考えている。

基本情報
事業名
日欧加コプロダクション・ラボ in 京都
会場
京都ロイヤルホテル&スパ 2F「麗峰」(京都府京都市中京区)
開催日
2011/1/9(日) 11:00 - 12:00
主催
経済産業省/公益財団法人ユニジャパン/Ateliers du Cinema Europeen/Telefilm Canada