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イベントレポート:国際的なメディアの変化とコンテンツ調達の現状について
概説

国際的にコンテンツビジネスを推進していくためには、マーケティング、技術、流通といったさまざまな分野でプロデュースに関わる人材が必要である。2016年2月27日 (土) に、国際コンテンツビジネスの最新動向を把握し、日本のコンテンツを国際展開していくための方法やそこで必要とされる人材像とその育成方法を探ることを目的とした「国際コンテンツビジネスフォーラム」が開催された。本セッションでは「国際流通」をテーマにプレゼンテーションとディスカッションが行われた。

内容

登壇者

クン・ガオ/Kun Gao

CEO, Crunchyroll, Inc

ゲン・フクナガ/Gen Fukunaga

CEO and President, FUNimation Productions, LTD.

モデレーター

笹島 一樹/Kazushige Sasajima

住友商事株式会社 放送・映画事業部 チームリーダー

1.Crunchyrollの現状

Kun Gao:

Crunchyrollは、多くのファンに支持されているアニメのコンテンツ配信サービス及びソーシャルネットワークの会社であり、本社はサンフランシスコにあるが、アニメのクリエイターたちと接点を持ちたいので東京にもオフィスを構えている。こうした会員制の課金ビジネスで成功するためには緻密なデータ分析と新しいテクノロジーへの対応は必須であり、加入者数や定着率といった視聴者情報の把握を常に行うとともに、独自のプラットフォームを構築して、どんな状況にも柔軟に対応できる体制を構築している。また、コミュニティーも重要であるため、年間50以上のコンベンションを主催、もしくは出展し、クリエイターとファンが交流する機会を設けている。

アニメコンテンツには世界中でチャンスがあると考えており、市場の成長率がもっとも高い地域である中南米をはじめ、世界の多くの市場は成長段階にあるが、そうした市場であっても、新たに開拓していくことは米国以上に困難だと考えている。まずは市場に適したコンテンツの権利を獲得していくところからはじめる必要があるが、一部の国ではオンライン決済や課金が非常に難しいという現状もあるため、現地で緻密にマーケティングをしながら、着実にユーザーを獲得していく必要がある。

現在、Crunchyrollの有料会員は75万人おり、来年には100万人に到達すると予想している。これを実現させるためには、常に新しいサービスを提供し続けていかなければならないと考えており、そのために視聴者からデータを集めて分析し、どうしたらアニメがより広く受け入れられるようになるのかを模索している。

2.FUNimationの現状

Gen Fukunaga:

FUNimationは1994年にスタートし、東映アニメーションからフランチャイズ権を獲得した『ドラゴンボール』シリーズをはじめ、現在、約400本におよぶアニメ作品のブランドマネジメントと配信を手がけている。劇場公開のタイミングに合わせてサイマル配信を実施するほか、ダウンロードビジネス、ホームビデオの配信、コンベンションへの参加などにも力を入れている。NetflixやHuluなどのビデオオンデマンドとのパートナーシップもあり、より大きなプラットフォーム事業を展開していくほか、コレクターにとっても大きな価値があるパッケージ商品の販売も始めている。

我々はテクノロジー企業ではないため、技術力を持っているソニーとパートナーシップを結んでサービス開発を行っている。つい最近も、自社のデジタルプラットフォームの名称を「FunimationNow」へと変更し、ソニーのテクノロジーを使って、Netlfix、Hulu、Amazonなどにはない4K対応のSVODを実現させた。

3.国際流通の課題

Kun Gao:

プロデューサーとしては、コンテンツの価値をさらに高めるために、観客が誰なのかを知りたいと思っている。膨大なデータを分析し、彼らは「何を楽しんで、何を楽しんでいないのか」を解明し、その情報をクリエイターと共有することで、より観客にふさわしいコンテンツを制作できると考えている。

米国におけるアニメのファン層の中心は、基本的には10-30代のミレニアル世代だが、アジア系だけでなく、白人、ヒスパニック、アフリカ系などあらゆる人種をカバーしている。視聴者のセグメントもさまざまで、例えば、スポーツ、アクション、少年向けのタイトルなど、個人それぞれが自分の好きなジャンルのコンテンツを見たいと思っている。だから、誰にでも受けるような作品でなくとも、一部に熱狂的なファンが生まれるようなコンテンツをつくればいいと考えている。

日本では、まずマンガが市場に出て、アニメーション、マーチャンダイジングと続き、イベントなどへと広がっていく。それに対して、米国ではまず動画コンテンツが市場に出ることになるが、その後のマーチャンダイジングへの展開が大きな課題となっている。商品開発や流通のシステムが確立しており、各タイトルに対してさまざまな関連商品を展開している日本と違い、米国ではまだそのシステムが確立されていないが、これから大規模に手がけていきたいと考えている。

4.日本が米国市場に進出する際に求められているもの

Kun Gao:

この業界で成功する人材には、アニメが好きなこととビジネススキルがあることが求められるが、そのバランスが非常に大切だ。今、会社のほとんどは、33歳の自分より若い人材ばかりだが、彼らは情熱を持っており、ソーシャル、モバイル、アプリ経由でユーザーとコミュニケーションができ、視聴者のパターンも理解している。視聴パターンがテレビからデジタルへと移行し、新しいプラットフォームが生まれている現在、新しい感覚を持った若者が組織にいることは非常に重要だ。しかし、日本では、若者たちが組織の中心になり切れていないのではないかと感じている。

現在、日本の作品の8割以上は国内で出資されて製作されており、日本式のビジネスモデルでないと製作できない状況にあるが、今後、日本との合作やプロデュースを多く手がけたいと思っている。国際的な企業が製作に関われば、国際的な広がりのある真のビジネスが展開できるなどメリットは大きい。そして、我々の持つ様々なデータを提供することで、海外における観客の嗜好を分析することができるので、より多くのファンを取り込むことができるだろう。

米国市場で主流になるための施策として、Crunchyrollでは2015年に10 - 15作品の吹き替えを行った。今後は、製作プロセスの中にあらかじめ吹き替えのプロセスも組み込み、吹き替え商品をすべての主要市場でリリースしていきたい。

現在、日本のテレビには200ぐらいしかアニメの枠がなく、その枠が取れなければアニメの製作ができないのが現状だ。しかし、新しいプラットフォームの誕生によって、テレビのアニメ枠に頼らなくてもアニメを製作することができるようになった。それによって、視聴率に依存しない、特定の観客に向けたクリエイティブな作品が多く生まれている。我々も、そのソリューションの一角になりたいと考えている。

Gen Fukunaga:

日本のアニメは革新性とバリエーションが豊かであるからこそ、米国でも成功しているのだと思う。非常に満足しているが、唯一言うなら、現在の日本の問題は、承認プロセスと権利関係のスピードが遅いことである。承認プロセスを見直して、放送となるべく近いタイミングでDVDを出せる体制づくりをする必要があるのではないか。また、米国、そして外国の地域で扱うなら、その地域にいるパートナーに権利を開放すること、つまり、彼らに自由を与えて任せることも重要だと思う。マーケティングや収益化に関して、今の体制では大きな制約があると感じている。

アニメ業界に適応する人材を探すのは難しい。というのも、アニメに対する情熱がありながらも、ビジネス面に長けている人は少ないからだ。ビジネスのことしか知らなくて、アニメへの情熱がないのでは厳しいし、同じように、熱烈なアニメファンだが、ビジネスをまったく知らない人も厳しいと思う。その組み合わせが、適応する人材かどうかのカギを握っているのではないか。その中で、日本では多くの優秀なアーチストが、アニメ業界で活躍している。クリエイティブな人材がアニメ業界に流入し続ければ、日本は今後も世界をリードし続けることができるだろう。

基本情報
事業名
国際コンテンツビジネスフォーラム
会場
TKP市ヶ谷カンファレンスセンター8F 大ホール (新宿区市谷八幡町)
開催日
2016/2/27
主催
経済産業省 / 公益財団法人ユニジャパン