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イベントレポート:先端技術を活用したコンテンツビジネスの最新動向について
概説

国際的にコンテンツビジネスを推進していくためには、マーケティング、技術、流通といったさまざまな分野でプロデュースに関わる人材が必要である。2016年2月27日 (土) に、国際コンテンツビジネスの最新動向を把握し、日本のコンテンツを国際展開していくための方法やそこで必要とされる人材像とその育成方法を探ることを目的とした「国際コンテンツビジネスフォーラム」が開催された。本セッションでは「技術革新」をテーマにプレゼンテーションとディスカッションが行われた。

内容

登壇者

エリック・ハンソン/Eric Hanson

Visual Effects Designer / Associate Professor of Practice, USC School of Cinematic Arts

レミ・ドリアンクール/Remi Driancourt

株式会社スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 ジェネラル・マネージャー / シニアR&Dエンジニア

モデレーター

元村 有希子/Yukiko Motomura

毎日新聞 デジタル報道センター 編集委員

1.AR、VR、AIを取り巻く先端技術の現状

Eric Hanson:

舞台、芸術などにもある没入感や臨場感を、テクノロジーを通じて映画の中にも実現させることに注力し、これまでに『フィフス・エレメント』『キャスト・アウェイ』『デイ・アフター・トゥモロー』などの長編映画のデジタル・エフェクトを手がけてきた。現在は、進化したソフトウェアと高度なテクニックを駆使して、文化遺産や自然、歴史などを、VRの手法で表現することを目指している。地形データなどを実際の映像と統合させることで実世界の環境を忠実に再現するなど、テクノロジーの進化により、映像の表現方法は劇的に変化してきた。スマートフォンを利用したヘッドセットも含めて、VR作品を見るための様々なヘッドマウントディスプレイが開発されており、VRへの期待が高まっているが、成功へ導くためにはやはり充実したコンテンツが必要だ。

例えば、我々が手がけている作品のひとつに、『VRトラベラー』という世界遺産を取り上げたシリーズがある。これはVR技術を駆使して、世界中の素晴らしい風景を忠実に、臨場感をもって体感できるもので、エベレストで撮影した作品に続き、数週間後にはマチュピチュで撮影した作品も発表するが、いずれ日本でもつくりたいと思っている。

Remi Driancourt:

人工知能 (AI) によって、エンタテインメント業界はユーザーにさらに楽しい体験を提供できるようになってきており、ゲーム業界においても最先端の技術はゲームエンジンのAI化だといわれている。AIによる感情表現や会話モデルもより自然に感じられるように進化しており、さらにアセットの自動制作、テストの自動化、データマイニング、機械学習等もできるようになり、これからは、AIがプロデューサーのような役目も果たすようになっていくだろう。例えば、プレイヤーの行動を継続的に学習するAIや、クロス・ゲーム・インタラクションを見守るAIなどが登場する。膨大なデータを処理する必要があるのでますます高度なAIが必要になってくるはずだ。

2.先端技術を活用したコンテンツの10年後の姿

Eric Hanson:

VRによる没入感を感じられるコンテンツは非常に面白い。「Oculus Connect」というカンファレンスで、「どこかの星に不時着し、宇宙人が話しかけてくる」という内容のデモンストレーション映像を見たが、非常に説得力のある作品だった。エイリアンが本当にそこにいるかのように感じられ、私のビジネスパートナーはエイリアンに向かって無意識に挨拶をしていたくらいだ。VRの先にある技術がARであり、ARには解決しなければならない技術的な課題も多いが、ARが普及すればマーケットの規模はおそらく3 - 4倍になるだろう。コンテンツ業界全体としても、VRやARは将来的に社会全体に大きな影響を与えるようになるだろうという認識になっている。

VRには「劇場用のVR」と「リアルタイムのVR」の2種類ある。劇場用のVRは、ダウンロードしてヘッドマウントディスプレイで作品を見るまでを、ひとつの環境の中で完結できるのが大きな魅力だが、そのためにもコンテンツの配信モデルを確立する必要がある。また、クリエイターとしてはVR作品で収入を生み出すとともに、他のプロジェクトの資金調達もできるというのが理想だが、現在はそこまで至っていないため、配信モデルと資金調達モデルが確立する2 - 3年後までどうやって生き延びていくのかという課題に立ち向かっている。なお、4 - 5年後にはヘッドマウントディスプレイが普及することで、安定したユーザー層ができあがると予測している。

Remi Driancourt:

テクノロジーの変化のスピードは目まぐるしいので予想するのは難しいが、ARはVRと同じように普及すると思う。そして、10年前のスマートフォンと同じように、制作の現場が革新的に変化するという点では、VRよりも有望だと感じている。

また、ゲーム分野においては、リアルタイムに制作するために、AIがさらに大きな比重を占めるようになるはずだ。また、AIはデザイナーの役割も担い、新しいコンテンツをつくり、プレイヤーの性格に応じてゲーム内容を調整するようになるのではないだろうか。しかし、AIによって自動化される業務があっても、クリエイターから仕事をうばうわけではない。最適化されるのは、クリエイターがつまらない作業だと思う、技術がいらない基本的な部分であり、こうした作業をAIに任せることで、よりクリエイティブに特化した時間を増やすことができるのだ。

3.日本のコンテンツ産業に求められている人材

Eric Hanson:

たとえこれまでに映画製作の経験があったとしても、今までの常識を捨て、これまで知っていることをすべて消し去ったうえで、どのようなストーリーをどのような映像で説得力をもって語るかという基本に立ち返る必要がある。まったく新しい作品をつくっていく余地があるという意味では、素晴らしい体験ができるだろう。

USCでVRを学んでいる学生たちを見ても、ここ6 - 7年で海外から留学してくるケースが増えている。そうした学生が手がける作品は、以前はローカルなテーマを取り上げたものが多かったが、ここ数年間で状況が劇的に変化し、ユニークで創造的な作品がアジアの留学生からも出てくるようになった。特に、日本は独自の伝統や世界観をもっているので、没入感のあるVR、ARのメディアでも有効に作用するのではないだろうか。

Remi Driancourt:

これから人材育成はかつてないほど重要になってくるだろう。組織の中での教育の仕方、管理の仕方を変えていく必要があり、競争に勝って優位性を持ち続けるためには、新しいトレンドを把握し、技術も使いこなせるようにならなければいけない。世界の舞台に出ていくために、まずは日本の強みを生かしてほしい。日本が長年にわたって培ってきたユニークな文化や民族性、デザイン性をどうやって世界に紹介するかが、今後の課題になると思う。さらに、語学の能力を磨き、コンテンツを他国の文化に合うように調整すれば、ビジネスチャンスは大きく広がっていくはずだ。

日本は、AIの技術を用いた独創的で素晴らしい作品やアプリケーション、最新のアンドロイドなどを生み出しているが、世界レベルでみると「意思決定プロセス」「機械学習」といった分野では遅れをとっている。トップダウンのアプローチや概念的な部分が少し弱いので、学校でもより高次のAIに力を入れ、さらに、哲学と結びつけて、「自立した存在というのはどういうことか」「人の心をどうやってモデル化していくか」という研究を強化すべきではないか。

基本情報
事業名
国際コンテンツビジネスフォーラム
会場
TKP市ヶ谷カンファレンスセンター8F 大ホール (新宿区市谷八幡町)
開催日
2016/2/27
主催
経済産業省 / 公益財団法人ユニジャパン