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イベントレポート:ハリウッドメジャーにおけるマーケティング手法とローカルプロダクションの現状
概説

国際的にコンテンツビジネスを推進していくためには、マーケティング、技術、流通といったさまざまな分野でプロデュースに関わる人材が必要である。2016年2月27日 (土) に、国際コンテンツビジネスの最新動向を把握し、日本のコンテンツを国際展開していくための方法やそこで必要とされる人材像とその育成方法を探ることを目的とした「国際コンテンツビジネスフォーラム」が開催された。本セッションでは「国際マーケティング」をテーマにプレゼンテーションとディスカッションが行われた。

内容

登壇者

ダグラス・モンゴメリー/Douglas Montgomery

Vice President of Category Management, Warner Bros. Home Entertainment Group

デヴィッド・マーフィー/David Murphy

Vice President of International Local Production, Warner Bros. Pictures International

モデレーター

ステュー・リーヴィー/Stu Levy

Founder & CEO, TOKYOPOP / International Chair, Producer's Guild of America

1.ハリウッドのメジャースタジオにおけるマーケティング手法

Douglas Montgomery:

ホームエンタテインメント分野における、世界最大の小売業者はNetlfixであり、サブスクリプション型のビデオオンデマンド、すなわちストリーミングでシェアを伸ばしている。2位はAmazon、3位がWalmartで、どちらもDVDやBlu-rayの販売量が多い。

現在のマーケティングにおいては、データ分析やリアルタイム処理が重視されるとともに、世界中の小売業者の存在がとても重要になってきており、Warner Bros. でも、AmazonやWalmartなどホームエンタテインメント分野の大手企業と提携している。

また、Warner Bros. では、データ重視のマーケティングを行っており、小売のデータと業界のデータを取得して、ドリルダウン分析を行っている。データを活用する際には、まず、業界全体を見て、全体像から分析し、その上で作品タイトルごとに分析していく。そのためにも、すべてのタイトルのすべてのフォーマットの状況がわかる、膨大な堅牢性のあるデータベースを構築している。重要なのは、単に情報を分析することではなく、その分析をもとに何をすべきかという視点である。

例えば、ペイTVやサブスクリプション型のサービスが世界でも大きなビジネスとなっているというデータをもとにして、(それに特化した作品製作を行うといったような) 賭けをすることがある。エンタテインメント作品に限らず、どんな商品をつくるにしても、優良なデータを活用したうえで、賭けをすることが必要であり、その結果がどうなるかはわからないが、賭けをすることでチャンスをつくることができる。

2.ローカルプロダクションの現状

David Murphy:

ローカルプロダクションとは、現地の人材と現地の言葉で製作された長編映画のことだが、Warner Bros. では、現地のタイトルを買い付けるほか、ときには共同製作や、100%自社で製作し、さまざまなメディア、フォーマットで配給、配信を行っている。2001年に世界のいくつかの市場で始め、その後、ビジネスを拡大させてきた。日本でも2004年から活動し、ここ数年間で足場を固めつつある。

劇場公開用のタイトルが中心で、主な収益源は興行収入というビジネスモデルだが、今後は戦略を変え、あらゆるメディアの収益ストリームを活用していく可能性もあるだろう。これまでに、全世界で580の作品を公開しており、興行収入はトータルで27億ドルに達し、現在も77の映画作品が、今年以降に製作される見込みだ。さらに、開発中の作品も36ある。状況が有機的に変化する国際的なビジネスであり、世界中に拠点を置いて、チャンスがあればタイトルを獲得できる体制を整えているが、その中に日本も含まれている。日本は、Warner Bros. にとって非常に重要なマーケットだ。劇場公開とその後の周辺事業で収益化を行うが、当然、劇場で成功すければ、周辺事業の収益も相対的に増加する。

日本の映画産業は安定していて、2,000億円くらいの興行収入があるが、日本市場の大きな特長は、邦画、すなわち、現地のプロダクトの比率が高いことである。したがって、Warner Bros. のようなグローバル企業も、日本のローカルな製作ビジネスに関わらなければと考えている。これまで日本では62タイトルを公開し、680億円以上の興行収入を得ている。成功例として、『るろうに剣心』シリーズ、『デスノート』シリーズ、2015年の『ヒロイン失格』などが挙げられる。

『るろうに剣心』は、日本のローカルプロダクションの収益の大きな割合を占めているが、こうしたヒット作が出ることで、将来の企画開発のための費用を稼ぐことができるので、日本のプロダクトに対してもっと投資しようというインセンティブが働くようになる。より大きな予算がかけられるようになったのと同時に、ワーナージャパンには、フィルムメーカー、プロデューサー、放送事業者など多くの人が集まってくようになった。

英国やドイツのローカルプロダクション作品も公開している。劇場ではあまり大きな成功を収めることができなかったが、SVODと有料放送のアウトプットの契約で配給した。これは、我々がグローバルにビジネスを展開しているからこそ得られるものだ。

3.グローバルな視点でみた今後の映画コンテンツのあり方

Douglas Montgomery:

SVODなど、技術の変化に速やかに対応することと同時に、例えば、「DVD、Blu-rayは収益が見込める」といったように、ビジネスが儲かるかどうかを考えることが重要だ。技術革新により世界中で商品を売ることができるようになったが、日本のコンテンツメーカーはそれをどのように活用していくかが、今後のキーポイントだ。

映画は、ストーリーがすべてである。世界の各テリトリーでローカルコメディやローカルドラマをつくっているが、良い脚本があれば成功する。とはいえいくら良い脚本であっても、4億ドルを投入した『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』の規模では製作できない。『バットマン』『スーパーマン』は興業実績があり、どれくらい売れるかがだいたいわかっている。そのような国際市場向けのコンテンツと、特定市場向けのコンテンツにかけられるコストはケタが違う。

ここ数年、Warner Bros. は、ローカルプロダクションに多くのリソースを投入するという大きな賭けをしている。劇場公開用のローカルプロダクションビジネスで、日本は非常にユニークな存在だ。日本でヒットするコンテンツは、『るろうに剣心』をはじめ、ファミリーアニメ、宮崎駿作品、テレビシリーズの映画化、マンガ原作の作品など、マンガやアニメに関係した作品が圧倒的に多い。オリジナルの長編映画、実写映画が少ないのが、少し残念だ。

『ゴジラ』『エッジ・オブ・トゥモロー』は、両方とも日本のプロパティをリメイクしてグローバル化したものだ。『ゴジラ』はもともと知名度のあるIPだったが、ニッチな存在だった『オール・ユー・ニード・イズ・キル』という日本のプロパティに原作と異なるタイトルを付けて、トム・クルーズを出演させた『エッジ・オブ・トゥモロー』は、プロデューサーや製作会社がそのストーリーに賭けた作品である。トム・クルーズは報酬も高いが、彼自身が世界的な知名度を有していることも重要だった。

David Murphy:

プロモーションにおいて、映画製作者、コンテンツ製作者との関係は非常に重要だが、PRをしてほしいというより、素材を完璧に仕上げてくれることに期待している。また、マーケティング手法として、ソーシャルメディアも世界に大きな影響力を持っているので、専任チームをもっている。

トレーラーは、できるだけ多くの人に見てもらうべきだ。ローカルプロダクションのマーケットは、PRや劇場公開にコストを割けないこともあり、ニッチな存在となってしまっているが、YouTubeなどのテクノロジーを活用することで大きなビジネスチャンスになるだろう。もちろん、劇場公開が最重要なのは変わらないが、新作を試写する別の方法や、その市場があることを認めなければならない。

劇場ビジネスはオリジナルコンテンツの成功予測が難しいので、投資のリスクを取りづらいということもあり、日本のローカルプロダクション戦略はIPに依存している。日本のもうひとつの難点は、国の支援が少ないことだ。欧州では補助金や税金控除といった国の支援のほか、各地方自治体の支援などがあるため、Warner Bros. 自身の投資が減り、リスクを軽減できる。

他の国との共同製作は世界中にチャンスがあり、成功した事例もある。共同製作は財務的なメリットを享受するためのものであり、例えば、国の支援が充実しているカナダと合作を行えば、日本側のメリットは大きい。しかしながら、それぞれの地域にはルールがあり、撮影場所、予算など考えなければならない制約も発生する。

日本の文化はとてもユニークだが、そのままだと海外、特に米国では受け入れられないかもしれない。しかし、映画はストーリーが重要で、原作の質が高ければ全世界で通用する様々なチャンスが生まれる可能性がある。そのためには、原作を世界向けに脚色していくことが重要であり、必要なのは優秀な脚本家とプロデューサーではないだろうか。

基本情報
事業名
国際コンテンツビジネスフォーラム
会場
TKP市ヶ谷カンファレンスセンター8F 大ホール (新宿区市谷八幡町)
開催日
2016/2/27
主催
経済産業省 / 公益財団法人ユニジャパン